第26章 交差する想い
~武田一鉄side~
「澤村君!遅くなってすみません!」
体育館へ駆け込み、約束をしていた澤村君を見つけながら息を整えた。
澤「先生、そんな慌てなくても・・・」
「いえ、職員会議が長引いてしまって・・・約束していたのに申し訳ないと思いまして・・・」
菅「だからって先生が廊下走ったらダメじゃん?」
菅原君までもが僕に苦笑いを向け、澤村君と2人で歩いて来る。
清「武田先生、はい、これ」
「え?あ、ありがとうございます」
さり気なく清水さんが紙コップにドリンクを入れたものを渡してくれて、僕は一気に飲み干した。
ふぅ・・・やっと落ち着けた。
澤「清水、アレ持って来て?」
澤村君の言葉に清水さんが頷き、可愛らしいキンチャク袋を澤村君に手渡した。
澤「先生、これをお願いします。今いる部員からのメッセージが入ってます・・・紡に、渡して下さい」
両手でそっと受け取り、確かにお預かりしましたと返事をして、もう1度袋へと視線を移す。
「カワイイ袋ですね。急な事なのにこんな風に用意が出来るなんて、僕はビックリです」
結ばれたリボンを指で撫でながら澤村君を見ると、澤村君が袋は休み時間を使って清水さんが縫った物だと教えてくれた。
菅「大地はさ、紡ちゃんにメッセージを書こうって事までは良かったんだけど。それを入れる袋とかまでは考えてなかったんだよな?」
ポンっと澤村君の肩に手を置いて、菅原君が笑った。
澤「まぁ、そう言うなって。だから清水に頼もうとしたら、既に考えてくれていて。さすが清水!」
清「別に、ほとんど真っ直ぐ縫うだけだから」
ポツリとそう言って、清水さんは髪をかきあげた。
みんな、城戸さんの事を大事に思ってるんですね。
もちろん僕もですが。
「では、今から僕は病院へ行ってきます。何かあれば連絡は取れるように携帯を持ち歩いてますから、そこに連絡下さい」
澤「先生、よろしくお願いします」
分かってますよ、と返し、そのまま僕は駐車場へと向かった。
車を走らせ、城戸さんのいる病院へは、混雑に当たる事もなく時間もかからず着くことが出来た。
・・・そう言えば。
さすがに昨夜のままの部屋ではないですよね?
と、なると?
受付に聞かなければ行けないですね。
入口を入り、入院案内の窓口へと行きかけた時。
ー 武田先生? ー