第26章 交差する想い
岩泉先輩を見送った時とは、違う気持ちが心を埋めて行く。
『私・・・ホントはまだ・・・』
言い終わる前に、頭をかき寄せられる。
国「俺が、頭ん中リセットしてやるから」
私を抱き寄せる腕に、力が入る。
リセット・・・したら・・・
少しは楽に・・・なれるのかな・・・
ねぇ・・・岩泉先輩・・・?
だって。
忘れてくれって、言ったよね・・・?
目の前の温もりに、そっと腕を伸ばす。
さっきとは違う感触。
さっきとは違う・・・匂い。
目の前の全てが、さっきとは違くてクラクラしてくる。
『甘えても、いいの?』
国「甘えさせんの、紡だけだし」
普段とは違う物言いに、少しずつ足下から溺れて行く・・・
『リセットしたい・・・』
胸に顔を埋めて、呟いた。
国「いいのか?」
聞き返されて、小さく頷く。
『何かが・・・変わるなら』
国「後悔、しない?」
『国見ちゃんこそ・・・』
ほんの少しだけ体を離して、顔を上げた。
『後悔、しない?』
国「するわけ、ないだろ」
私の頬を撫でながら、国見ちゃんが小さく笑う。
『あのさ、国見ちゃん・・・』
国「・・・ん?」
『私、ほんとに・・・その・・・』
国「もう、喋んな・・・」
指で口元をなぞられ、体がピクリと反応する。
国「紡・・・」
名前を呼ばれ、反射的にシャツを掴む。
射抜かれるように見つめられて、私はそっと目を伏せた。