第26章 交差する想い
そりゃ、かわいいなぁとか、好きだなぁとか、そんな事だろ。
あとは、その場の雰囲気とか?
「人・・・それぞれじゃね?だいたい、嫌いなヤツとかにはしないだろ。何で?」
『あ、ううん・・・別に』
・・・なんか怪しい。
『好きじゃなくても、そういうのする事・・・あったりする?』
「まぁ・・・あるんじゃね?その場の空気に流されたり、とか。欲情したりとか?」
『つまり、は。そういう時って、誰でもいいって事?』
何でそんなにこんな話に食いつく?
「そういう人もいるだろうけど・・・例えば及川さんとか、さ可愛けりゃ誰でもいい的な?あとは、自分の好みにハマってたらとかじゃない?」
言いながら、俺って結構酷いこと言ってんなぁと思った。
まぁ、あのエロフェミニストに関してはだいたい正解だし。
チラリと紡を見ると、ベッドから降ろした足を揺らしながら難しい顔をしていた。
コイツ・・・岩泉さんと何かあったのか?
暫く会ってなかったとはいえ、様子が変なのは俺にだってわかる。
もしかして岩泉さんと・・・?
いや、まさかな?
だって俺が知ってる岩泉さんは、軽はずみな気持ちで・・・そんな事しない、だろ?
エロフェミニストじゃあるまいし。
もし、俺が知らない岩泉さんの顔があったとしたら・・・
いや、紡と付き合ってる間そんな事なかったのに、急にどうこうなるワケ・・・・・・。
可能性は、無くは・・・ない?
久しぶりの再開で、なんかこう気持ちが盛り上がっちゃって、とか?
嫌な感じで、汗が背中を伝う。
「紡・・・岩泉さんと、キスしちゃった?とか?」
『なっ!ない!してないよ!!わっ?!』
もの凄い勢いで肩を跳ねさせ、紡がベッドから落ちそうになる。
「危ねっ!・・・お前、ケガで入院してるの忘れんなよ・・・」
『スミマセンデシタ・・・でも!今のは急に変なこと言うからビックリして!だから国見ちゃんのせい!』
俺のせいかよ!
・・・そう、言い返そうとして、動けなくなる。
落ちそうになった紡を抱きしめたままの距離、柔らかい感触と、甘い香り。
腕の中で俺を見上げる・・・紡。
俺・・・ヤバイ。
「紡・・・」
軽く瞬きをして、紡が更に上を向く。
「俺と、キス・・・してみる?」