第26章 交差する想い
男から貰った事を知って、眉がピクリと動く。
『どこに行ったんだろうって思ってたけど、青城の体育館に落としてたんだね・・・拾ってくれてありがとう国見ちゃん』
受け取ろうと手を伸ばす紡の手のひらを、ヒョイっとかわす。
「ありがとう、だけ?」
ニヤリと笑って見せ、髪飾りを手のひらで包み隠す。
「国見ちゃんありがとう!大好き!って言うんじゃなかったっけ?」
追い込むように言うと、紡は顔を真っ赤にして言えるわけないでしょ!と怒り出した。
「つまんねぇの。はいよ、今度はなくすなよ?金田一が先に見つけたんだけど、アイツこれが何か分かんなくて俺に聞いてきた。ホント女っ気ないから笑えるだろ?」
肩を竦めて言うと、紡も笑い出した。
やっぱり、こいつは笑ってる方がいい。
・・・泣いててもホントは、カワイイと思ってるけど。
そんなこと、言えるわけないしな。
近くにいても、手は届かない・・・
そんなの、今に始まったことじゃない。
岩泉さんに勝てるとは思ってないし、真っ向勝負したって勝敗は分かってる。
だったら、岩泉さんの事をまだ忘れられない紡を丸ごと、俺が好きでいることは構わないだろ?
紡にとって、なかったことには出来ない事実。
俺がその事実を全部受け入れられるくらいデカイヤツになったら、その時は・・・さ?
話くらい、聞いてくれてもいいよな?
・・・っていうか、それより。
「紡?大地さんって、誰?」
さっき出た名前の主が気になって、つい、紡に聞いてみる。
『大地さん?烏野の、キャプテンだけど?昨日もいたよ?』
烏野のキャプテン・・・?!
アイツか!!
他校と言えど先輩なのに、思わず心でアイツとか呼んでしまう。
だって、その人は確か昨日・・・
事ある毎に紡の側にいたし。
金田一から紡がいたって聞いてから、練習の合間にチラッと探しても見当たらなかったし。
そう思ってた所に、その人と紡が一緒に体育館に入って来た時の様子は微妙な感じだし。
ネットに絡まった紡の髪とか、何の抵抗もなく手助けするし。
紡も紡だろ。
耳まで赤くなりながら抱きついてたり。
倒れた時だってそうだ。
血相変えて走って来たと思えば、側にベッタリで離れないし。
離れないっていえば、あのアホ毛の1年もだけど!
・・・あれ?
ここまで考えて、気付く。