第26章 交差する想い
軽口を言いながら紡をベッドの上に座らせてやる。
「お前さぁ、病院にぼっちだからってベソベソしてんなよ?アイテッ」
紡から軽くパンチされ、暴力はんたーいと両手をあげて見せる。
『ベソベソなんかしてないし』
「嘘つけ。どー見ても泣いてただろ。お前泣き顔ブスなんだからバレバレなんだよ」
『ほんっとに国見ちゃんと影山は同じ事ばっか言うよね。いじめっ子だよ』
プイっと横を向く紡を見ながら、影山の名前が出た事に少しだけイラッとしながら、ベッドサイドのテーブルに小さなブーケがある事に気付く。
「紡、俺より先に・・・誰が来てたのか?」
尋ねるように言うと、紡はピクリと肩を震わせた。
『国見ちゃんには関係ない』
なんだ、この不貞腐れた態度。
「影山か?」
『違うし。何で影山が出てくるの』
「紡が先に影山の名前を出すからだろ」
『影山じゃないし。今ごろ王様は部活やってるよ、きっと』
ふ~ん・・・影山じゃないとしたら。
俺はさっき思っていた事を口に出してみる。
「じゃあ・・・岩泉さんが来た?とか?」
俺の言葉に、紡の目が泳ぐ・・・
マジかよ、まさかのビンゴかよ?
『し・・・知らない・・・』
知らないって、そんな訳ないだろって!
じゃあ、やっぱりさっきの岩泉さん・・・は病院の帰りだったのか?
「別に・・・岩泉さんが来てたっていいだろ?普通にただのお見舞い・・・とか、そんなんだったら。別に俺だって同じだし?」
『・・・・・・ゃんは・・・国見ちゃんは良いよね、いつも学校行けば会えたりするし』
「・・・え?なに?」
『・・・何でもない。ゴメン・・・』
「何でもないって、お前・・・」
言いかけて、やめた。
紡の・・・紡の瞳が切なげに揺れたのを、見てしまったから。
「あぁもう降参!俺は何も聞かなかったし知らない事にする。だから、そんなイジケた顔すんなって」
膝を抱えて動かない紡の頭をポンッとひとつ撫でて、俺はベッドの脇の椅子に腰掛けた。
「俺がここへ来た用事はさ、コレ、紡のじゃないかと思って持って来たんだよ」
鞄から昨日拾った髪飾りを出して、紡に向けて見せる。
「ウチの体育館の端に落ちてたからさ。端っこの接着が取れてたのは、勝手に俺が直しといたけど、いいよな?」
『髪飾り?・・・あっ・・・大地さんから貰ったやつだ』