第26章 交差する想い
また、だ。
俺らしい・・・って、なんだ?
どんな時もバレーに集中して、何が起きても我関せずで冷静にプレーを続ける・・・そんな完璧な事をするのが、俺らしい・・・のか?
だとしたら、紡・・・悪ぃな・・・
俺はそんな完璧な人間じゃねぇよ。
不完全で・・・ダメな男だ。
今でさえ、お前が他のヤツのモンだとわかってるのに・・・この手を離せそうにない。
「お前が倒れていくまでを一部始終目の当たりにして、俺は心臓が止まるかと思った。みんなが駆けつけて説得する中で、泣きながらもお前を離したくないと叫ぶアイツを見て、何度も胸を撃ち抜かれる思いもした。俺に、そんな真っ直ぐな事が言えたら・・・変な覚悟をしなければ・・・今、そうやって叫んでいるのは、俺だったかも知れないのに・・・ってな。正直なところ、妬けたよ・・・」
だから、いたたまれなくなって口実を作って外へ出たんだと告げると、紡は小さく息を吐いて話し出した。
『私は・・・確かに最後の日は置いてかれた事が悲しくて、辛くて、実際たくさん泣きました。後悔もたくさんしました。一緒に走り続けたいって、ワガママのひとつさえ言えなかったんだろう、とか。でも、恨んだりとかしてません。岩泉先輩はそれだけの覚悟を決めて、そういう決断をしたんだから・・・だから、そのまま、ただ真っ直ぐ前を見て、突っ走って下さい・・・立ち止まったりしたら、その時は・・・怒りますよ?』
紡は瞳を揺らせながら俺を見上げ・・・そして・・・
胸を押し返す。
「お前は・・・やっぱり強くなったな・・・」
視線を絡ませたまま、ポツリと零す。
『強くなんかありませんよ?でも、岩泉先輩にそう見えるなら、それは私が・・・ひとりぼっちじゃ・・・なくなったから、かな・・・』
絡んだ視線を外し、紡は小さな声で言った。
ひとりぼっちじゃない・・・か。
いま、お前は誰を思い浮かべてそう言ってるんだ?
頭の片隅に、烏野の主将がチラつく。
「俺は・・・お前を1人にさせたつもりは、なかったんだけどな」
チラつく影を消したくて、紡の額に自分の額を付けてみる。
「岩泉先輩に、ひとりぼっちにさせられたとは思ってませんから。これは、私の気持ちの問題です」
くっつけた額を離し、紡は俺に笑いかけた。
気持ちの問題・・・その原因を作ったのは俺なのに。