第26章 交差する想い
『ひとつ、質問していいですか?』
ふいに紡が顔を上げ、俺を見る。
「何だ?」
『私が入院継続した事、誰から聞いたんですか?』
何で、そんな事を聞くんだ?
俺が影山から聞いたと答えると、また、紡は難しい顔をし始めた。
「昨日・・・俺が影山に電話して、診察の結果が分かったら知らせてくれって頼んだ。それで影山から昼くらいにLINE来て、ビックリしてまた電話したんだよ」
そこに関しては間違いのない事実だ。
隠す必要もねぇ。
『そうだったんですか・・・』
「紡・・・」
『はいっ!』
いろいろ謝ろうと思って名前を呼ぶと、予想外の返事の大きさに驚いた。
「出席取ってんじゃねぇんだから・・・」
『ちょっとビックリしちゃって』
さっきまで心の中でしか、名前・・・呼んでなかったからな。
「紡、ごめんな。こんな事になるほど、痛い思いさせちまって」
『別にこれは私の不注意だったし、岩泉先輩のせいだとか思ってませんから。それに頭の方は大きなタンコブひとつで済んでるし?』
紡は頭に手をやり、そっと位置を確認していた。
ここが、1番痛かった場所か・・・
視線はそのままに、俺は紡の手の上から自分の手を重ねる。
少しでも、その痛みが俺に伝わる様に・・・
「いや、俺が打ち分ける判断を見誤った。だから、金田一が取り損ねて・・・あんな事に」
もっと、近くに・・・
そう思い、鞄を床に置きベッドに腰掛け、そのまま紡の頭を抱き寄せる。
懐かしい、紡の・・・匂い・・・
紡の甘い匂いに惑わされ、胸の音が早くなって行く。
抱き寄せた小さな体は、俺を押し返そうともせず、ただ・・・じっとしていた。
もう、戻れないって分かってる。
だけど今は、このままで・・・
きっとこんなに近くにいられるのは、これが最後だと思えば思うほど、心が離れられなくなる。
俺は・・・紡の背中を押すって決めたじゃねぇか。
コイツの幸せを・・・願ったばかりじゃねぇか。
なのに、いざ紡を目の前にすると・・・こんなにも、気持ちが揺らぐ・・・
「紡、1度しか言わねぇ。だから、言い訳を聞いてくれ」
『言い訳・・・?』
「あぁ・・・聞いてくれるか?」
態勢を変えることもせず、紡は頷づく。
それから俺は、次々に昨日の事を紡に話すと、紡は集中出来なかった事を、俺らしくないといった。