第26章 交差する想い
個装の箱から覗くパンダに紡が騒ぎ出す。
キラキラと目を輝かせながらカップを持ち上げ、右に左にデザインを眺めてはカワイイを連発しては、口元を緩ませている。
カップの縁に腰掛けたパンダが特に気に入ったみたいで、ちょん、と突っついてみたり撫でたりしている。
・・・なっ?!
い、今、パンダに口付けた?!
ドクンと音を立て、鼓動が跳ねる。
お、おお、お前・・・なんつー可愛い事してんだよ!
一瞬、カップになりたい・・・とか・・・
・・・・・・・・・・・・。
待て待て待て待て!!
それじゃ俺が変な奴みたいじゃないか!
『ありがとうございます!凄く可愛くて、嬉しいです!』
「そんなに喜んでくれたなら、そりゃよかった」
自分を落ち着かせるように、紡にバレないように小さく深呼吸をする。
『昨日からカップがなくて、食事の度にナースセンターから紙コップ貰ってたから。さっそく夕飯の時から使います・・・あの、でも。これ岩泉先輩が?』
「俺以外に誰が行くんだよ。ちゃんと俺が見て選んだんだよ」
いや、正確にはショップ店員のオススメもあったんだが・・・最終的には俺の判断で、ってことでいいだろ。
これを選んだ決定的な理由ってのは・・・紡には言えないけどな。
チラリと紡を見ると、俺を見て紡がニヤリとしているのがわかった。
「な~に、ニヤついてんだ?」
何となくイジワルしてやりたくて、スッと手を伸ばし紡の鼻を摘んでやる。
『は、鼻もげちゃうっ!』
「こんなんでもげるか!」
紡の反応が面白くて、もう1度ムニッと摘んでから解放してやった。
『これ以上ブスになったらどうするんですか・・・タダでさえ頻繁にブスって言われてるのに』
鼻を押さえながらそんな事を言う紡を見て、今更ながら女っつうのは、そんな事を気にすんだなと笑った。
「もし、嫁の貰い手がなくなっちまったら・・・その時は・・・」
俺が、貰ってやる・・・とか言ったら、紡はどんな顔をするだろうか。
今更・・・なんて言って、怒るだろうか?
『そ、その時は?』
「どうしたらいいか、俺が一緒に考えてやる」
ニヤリとしながら、紡の頭をつついてみる。
『そっちですか?!』
そっち?!って、紡はどんな返事を待ってたんだ?
嫁の貰い手はある!とでも、言えば良かったのか?
・・・分かんねぇ。