第26章 交差する想い
~岩泉side~
病室のドアを開けて中に入ると、目を丸くする紡がいた。
外まで聞こえた叫びの原因は、どうやら影山らしい。
紡が言うには、ブスだの、チビ助だの言われたって拗ねてるし。
そんな事、拗ねたりしなくたってお前の可愛さは俺は良く知ってっからよ。
すっとぼけた天然っぷりも、拗ねるとすぐ膨れる事も・・・全部、知ってっから。
あぁでもねぇ、こうでもねぇと話をしていると、今度は部活はどうしたんだとか言い出す始末・・・。
『ま・・・さか、サボり?』
はぁ?!
「んなワケねぇだろ!休みだ休み!今日は俺らの体育館が設備点検で使えねぇんだよ」
『あはは・・・ですよねぇ・・・』
ですよねぇ・・・じゃねぇだろ!!
「で、昨日の今日だし。時間は出来たし。お前の様子を見に来たんだが・・・そうかそうか。お前は俺がサボったと思ってたのか・・・へぇ~・・・」
こう言うと、紡は決まって・・・
『ち、違いますよ!そういう訳じゃ』
ほら来た、予想通りの返事。
少し前のめりになって弁明する姿が、前と変わっていない事に笑う。
昨日・・・あんな風に泣いている姿を見た後は、半身を剥ぎ取られる様な痛みに悶えた。
心の中が空っぽになるような、そんな空虚感さえ感じて・・・
改めて、紡がどれだけ俺の中で割合を占めていたのか気付かされた。
会わないでいた時間が急速に巻き戻されて、叶うなら最後の日までリセット出来ないか、とか、そんな望みも生まれた。
出来るワケ、ねぇのによ。
「また難しい顔して何思い込んでんだよ?あ、そうだ。これ、お前に」
持って来たものを、紡の手元に置いてやる。
『可愛い花束・・・今しか咲けないチューリップがこんなに。でも、これは・・・』
「見舞いの花と、あとそっちは詫び・・・というか、まぁ貰っとけ」
『開けてもいいですか?』
ひとつ頷くと、紡は器用に包みを開けていく。
花の方は、通りがかりの店で妙にこの花が気になってこの花を選んだワケだが・・・
花屋のオバチャンのニヤつく顔が、どうも気になる。
そういや、プライスカードに花の名前と、あと何か書いてあった気がする。
・・・花言葉?だったっけ?
そういうのが、ニヤつかれる理由にもあるのか?
よく分かんねぇケド、後で思い出したら検索でもしてみるか。
『パンダちゃん!』