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【 ハイキュー !!】~空のカタチ~

第26章 交差する想い


『私は・・・まだまだって事ですかね?』

胸のざわめきを知られたくなくて、わざとおどけて笑って見せた。

岩「・・・そうかもな?」

岩泉先輩も笑いながらそう返して、私の頭を撫でる。

岩「紡・・・さっきは、悪かったな・・・忘れてくれ・・・」

『・・・ハジメ先輩がそう言うなら、そうします・・・でも、じゃあどうしてそんな・・・』

そんな・・・顔で言うんですか・・・?

言葉に出来ない思いが、浮かんでは消えていく。

『・・・・・・何でもありません』

顔を見るのが辛くなって、視線を落とす。

岩「本当に、悪かったな・・・だけど、あの瞬間は・・・あの一瞬はウソじゃない、から・・・じゃ、行くわ」

床に置いていた鞄を肩に掛け、岩泉先輩は背中を向けた。

また、離れて行ってしまう・・・

そう思うと、咄嗟にその袖口を掴んだ。

岩「紡・・・?」

『約束は・・・忘れたら嫌ですよ?』

今出来る精一杯の笑顔を向けて、それだけを言葉にした。

岩「あぁ・・・分かってるよ」

お互いに笑顔を交わし、掴んだ袖口を・・・離した。

『行ってらっしゃい、ハジメ先輩』

岩「・・・あぁ。またな、紡」

そう言って歩き出す岩泉先輩の背中を、いつかのあの日と同じ様に見送った。

静けさに、押し潰されそうになる。

私はまた、見送るしか出来なかった・・・

なんだ・・・私ちっとも、成長してないじゃん。

見えるかどうかなんて分からないのに、痛む足を引きずりながら、窓辺に立つ。

もう、行っちゃったよね?

諦めかけた時、病院の出入口から岩泉先輩が出てくるのが見えた。

呼んだら・・・振り向かないかな・・・?

そんな事を考えながら、小さくポツリと名前を呟いてみる。

『ハジメ先輩・・・』

嘘・・・?!

立ち止まった?!

その姿から目を離せないでいると、岩泉先輩は振り向き・・・私がいる病室の窓を見上げた。

見える・・・かな?

窓の内側から、大きく手を振って見る。

すると岩泉先輩は鞄を掛け直し、手を振り返すと、また、歩いて行った。

少しずつ小さく遠くなる後ろ姿が、心の距離に比例している様で、胸が痛くなる。

崩れ落ちてしまいそうな気持ちを繋ぎとめるために、私はカーテンをギュッと握りしめていた。








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