第26章 交差する想い
『ただ真っ直ぐ前を見て、突っ走って下さい・・・立ち止まったりしたら、その時は・・・怒りますよ?』
岩泉先輩の顔を見上げ、精一杯の思いを込めて言って・・・そして・・・
胸を押し返した・・・
岩「お前は・・・やっぱり強くなったな・・・」
お互いに視線を絡ませたまま、岩泉先輩がそう言った。
『強くなんかありませんよ?でも、岩泉先輩にそう見えるなら、それは私が・・・ひとりぼっちじゃ・・・なくなったから、かな・・・』
そう言葉にすると、みんなの顔が次々と浮かんで来て、必要としてくれてるみんなの思いも・・・心に染み込んで行くのを感じた。
岩「俺は・・・お前を1人にさせたつもりは、なかったんだけどな」
コツンと額を当てられ、さっきより近い距離に・・・鼓動が反応する。
『岩泉先輩に、ひとりぼっちにさせられたとは思ってませんから。これは、私の気持ちの問題です』
くっつけられた額を離し、笑って見せる。
岩「昨日お前の姿を見た時、俺は一瞬・・・ハッとしたんだ。俺の中では、あの日のままのお前しか残ってなかったからな」
私の髪を何度も手で梳きながら、穏やかな顔をする岩泉先輩は、今まで見たどの表情よりも、私の胸を暖かくしてくれた。
『髪を切ったのは、失恋とかじゃないですよ?イジイジ、クヨクヨしてた自分に決別したかったから。バレーから離れて、いろんな事をしたくて。だから、その為のイメチェンです。周りから運動なんかした事ない人って、思われたくて、バッサリやりました』
岩「でも、結果的にはバレーに関わってんじゃねぇか?」
『そう言われると・・・ですね』
イタズラに笑い合いながら、言葉を交わす。
岩「実は、よ。今日、影山と話してる時に言われたんだよ。俺の知らない所で城戸は一生分くらい泣いたから、もう泣かすなってな。自分は城戸が泣くのを見たくないって言われて、そんなの俺だって見たくねぇよと思ったけど、それと同時に、それだけ泣かせたのは俺自身なんだとも、思い知った」
『影山が、そんな事を?』
どういう意味合いで影山が言ったのかは私には分からない。
けど・・・
岩「それを言われた時に思ったよ。俺が知らないお前を、影山はたくさん知ってるんだなとも思った」
『それはたまたまです。影山とはクラスも同じだし、訳あって放課後とかも一緒にいる事が多かったし』
