第26章 交差する想い
桜太にぃも澤村先輩も、どんな事も時間が解決してくれるって、そう言ってた。
でも、昨日からまだ1日しか過ぎてないのに?
岩「また難しい顔して何思い込んでんだよ?あ、そうだ。これ、お前に」
私の手元に、小さな包みと一緒に色とりどりのチューリップの花束が置かれた。
『可愛い花束・・・今しか咲けないチューリップがこんなに。でも、これは・・・』
岩「見舞いの花と、あとそっちは詫び・・・というか、まぁ貰っとけ」
詫び?
『開けてもいいですか?』
岩泉先輩が頷くのを確認して、可愛くラッピングされた包みを丁寧に開けていく。
頭を覗かせた箱を開けると・・・
『パンダちゃん!』
私が使うには少し大きめのマグカップが出てきて、カップの縁には小さなパンダの飾りが腰掛けたデザインが見えた。
落とさないように箱から取り出すと、カップの側面には大きなハートがデザインされている。
可愛い・・・思わず口元が緩むのを自覚する。
『ありがとうございます!凄く可愛くて、嬉しいです!』
岩「そんなに喜んでくれたなら、そりゃよかった」
『昨日からカップがなくて、食事の度にナースセンターから紙コップ貰ってたから。さっそく夕飯の時から使います・・・あの、でも。これ岩泉先輩が?』
岩「俺以外に誰が行くんだよ。ちゃんと俺が見て選んだんだよ」
岩泉先輩が1人で買い物をする姿を想像して、更に口元が緩んでしまう。
どんな顔して、買い物してたんだろう。
岩「な~に、ニヤついてんだ?」
言いながら鼻を摘まれて、ムギャっとおかしな声が出た。
それを聞いて、岩泉先輩は私の鼻を摘んだまま笑い出した。
『は、鼻もげちゃうっ!』
岩「こんなんでもげるか!」
再度ムニッとしてから、ようやく鼻が解放された。
『これ以上ブスになったらどうするんですか・・・タダでさえ頻繁にブスって言われてるのに』
それを言うのは影山オンリーだけど。
『ブスになり過ぎてお嫁の貰い手が無くなっちゃう』
岩「なんだそりゃ。もし、嫁の貰い手がなくなっちまったら・・・その時は・・・」
深刻な顔で、岩泉先輩が腕を組んで考え込む。
『そ、その時は?』
岩「どうしたらいいか、俺が一緒に考えてやる」
『そっちですか?!』
いま、ちょっとだけ期待しちゃった事は内緒にしておこう。