第26章 交差する想い
静かにドアを開けた人物に、私は驚きのあまり瞬きをする事も忘れ凝視した。
・・・なんで?
・・・どうして?
疑問の言葉ばかりが浮かび、声が出ない。
岩「・・・よぅ」
ひと言だけ言って、岩泉先輩は開けた時と同じ様にドアを静かに閉めた。
岩「そう睨むなっての。随分とご機嫌ナナメな叫びが外まで聞こえたけど、どうしたんだ?」
『・・・睨んでなんか。それに今のは影山が!』
岩「影山が?」
『ブスとか・・・チビ助とか言うから・・・』
モゴモゴと言葉を半分飲み込むように言うと、岩泉先輩はそんな私を見てクスクスと笑い出した。
岩「全くしょうがねぇな、影山は。小学生か!お前も気にすんな。アイツのは小学生のいじめっ子だと思って受け流しとけ」
そう言いながら岩泉先輩はベッド脇まで来ると、私の頭をひとつ撫でた。
『あの、それよりどうして岩泉先輩がここに?』
岩「あ?俺が来たらダメだったのか?」
『そうじゃなくて、その・・・なんでかなぁ?なんて。そ、そう!ほら、あのっ、部活とかあるし!』
青城の部活動は滅多に休みは、私が知ってる限り・・・ない。
月曜日は諸活動休止的な学校の決まり事があっても、バレー部に関してはあまりそうではなかった。
どんな時でも練習、練習で。
だから会えない日もたくさんあって。
でも、そんな岩泉先輩が大好きで、応援したいって思ってたから・・・
寂しい、とか、なかなか言い出せなくて。
なのに、その人は今・・・ここにいる。
『ま・・・さか、サボり?』
岩「んなワケねぇだろ!休みだ休み!今日は俺らの体育館が設備点検で使えねぇんだよ」
『あはは・・・ですよねぇ・・・』
岩「で、昨日の今日だし。時間は出来たし。お前の様子を見に来たんだが・・・そうかそうか。お前は俺がサボったと思ってたのか・・・へぇ~・・・」
『ち、違いますよ!そういう訳じゃ』
岩「同じ事だ」
言い訳するように慌てて繕うと、岩泉先輩は前と変わらない笑顔で私を見ていた。
何でだろう。
昨日はアレだけ泣いて、悲しいとか辛いとか、そんな気持ちがグチャグチャになってたのに。
今こうして話をしていると、凄く、気持ちが落ち着いてる自分がいる。
少しだけ、ほんの少しだけだけど、前みたいな会話が出来ることが・・・嬉しいとも思える。
これが、1歩進めたって、事?
