第26章 交差する想い
ー あれ?ナースは誰もいなかったのか・・・あ、すみませんお待たせしたようで・・・ ー
背に向けた所に声をかけられ、少し驚きながら振り返り、更に驚く。
「つむ・・・あっ、と・・・城戸の・・・」
紡を家まで送った時、会話はなくとも何度か顔は合わせた事がある、知った顔だ・・・
ー 君は、確か・・・ ー
俺が身構えていると、ニコリと笑って面会受付の紙を差し出された。
桜「どうぞ?ここに訪問する患者名と、下の段に君の名前ね?で、その横に関係を記入してね?」
「はい・・・」
言われた欄に紡の名前と、俺の名前を書く。
関係って、どう書けばいいんだ?
知人・・・じゃ、余所余所しいし。
友人・・・ってのも、何となく距離感が・・・
桜「友人・・・で、いいんじゃないかな?だって、紡とはこれからも仲良くしてくれるんでしょ?」
「えっ、あ、はい!そのつもり・・・はありますけど・・・」
桜「そんな緊張しないでよ?」
穏やかな笑みを浮かべながら、カウンターに軽く頬づえをついて俺を見る紡の兄貴は・・・やはり兄妹だからなのか、紡の笑みと似ていて胸の奥がほっこりと暖かくなる。
桜「実は、さ?君とは1度話してみたいと思ってたんだよね」
はっ?!
え?!
あ、もしかして俺・・・妹を泣かせた罪は重いぜッ!的に殴られる系なのか?!
何となく硬直し、受付カウンターから1歩下がってしまった。
「それ、は・・・どういう・・・?」
桜「え?あ、もしかして俺、変な言い方したかな?・・・ちょっと待ってて」
そう言って1度カウンターから離れ、俺のいる廊下側へと出て来る。
やべぇな、 コレってもしかしていよいよじゃねぇのか?
ちょっと痛い位は覚悟しとくしかねぇな。
とりあえず怪我しても、ココ・・・病院だし、手当は大丈夫だろ。
桜「えっと、岩泉君・・・だったよね?紡の部屋に行く前に、少しだけ俺と話さない?」
「え?は、話・・・ッスか・・・?」
殴られるとかじゃねぇのか?
桜「え?・・・えぇっ?!もしかして俺に何かされるとか、そういう考えだった?!」
「あぁ・・・えっと、なんと言うか・・・妹を泣かせた罪は重いぜッ!的な何かが起こるのかと思ったり・・・」
わざわざ言わなければ分からなかったのに、なぜか紡と同じ目で問われるとバカ正直に話してしまった。