第26章 交差する想い
ー こう置くと・・・ほら!ふたつでひとつのハートマークになるんです。ね?可愛いでしょ?離れた場所で使っていても、同じ物を使うって、良いですよね~!さり気ないお揃いというか ー
ニコニコと営業スマイルをしながら、ふたつ並べたカップと俺を交互に見る。
さり気ない、お揃いで・・・
お揃い・・・
さり気ない・・・
「これ、下さい・・・」
ー ありがとうございます~。ラッピングはどういたしますか? ー
「こっちのはこのままで、これだけ包んで貰えればイイっす・・・」
ー かしこまりました。ではレジまでどうぞ~ ー
別に、お揃いの物が欲しかったワケじゃねぇ。
だから、色違いのカップをこっそり使おうとも思ってねぇ。
ただ・・・俺は。
何もしてやれなかった紡と、ひとつくらい同じ物を持っていても・・・いいかなと、思っただけだ。
紡には言わない・・・俺だけの秘密だ。
会計を済ませ、店を出る。
通りすがりの花屋で、パッと目を引いた花を数本買い込み小さな花束にして貰う。
花屋のおばさんがニヤニヤしながら、頑張りなさいよ?なんて言いながら俺に手渡したが・・・意味が分からず曖昧に返事をした。
さて・・・病院までは来たが。
ここまで来て、紡がどこの部屋なのか分からねぇ。
本人に聞くのも変だしよ。
影山・・・には聞けねぇしな。
・・・困った。
こんなデカい病院内をひと部屋ずつ探すのは容易じゃねぇ。
何となく足が向くまま進むと・・・
〖 入院受付・案内はこちらへ 〗
これだ!
すぐさま事務員に声をかけ、名前と昨日救急搬送された事を伝えると、パソコンで調べてくれて病棟の場所と部屋番号を教えてくれた。
っつうか、紡・・・小児科なのかよ!
外科や整形外科じゃなく、小児科?!
見た目が小さいからか?!
高校生はまだ小児科なのか?
いやそうじゃねぇよな?!
俺が入院とかになっても、小児科って事はねぇべ!
エレベーターを待っている間、込み上げてくる笑いを堪えるのに必死で、グッと口に力を入れ平静を装った。
エレベーターを降りて正面のナースセンターで面会受付をしようと・・・思ったんだか・・・?
誰もいねぇ。
「あの、すみません・・・」
静かな空間に遠慮がちに声をかけて、やっぱ誰もいねぇ、待つか・・・と背を向けた。