第26章 交差する想い
「城戸は・・・強くなったわけじゃないです。そう見せてるだけで、本当は、そうじゃない・・・」
電話の向こう側で、岩泉さんが息を飲むのが分かる。
そしてきっと、岩泉さんの知らない城戸を、俺は知っている。
マネージャーを誘いに澤村さん達と今で行った時も、我慢して我慢して、震えてた。
それに昨日だって。
俺は・・・城戸がまた泣いてるところを、見たんだ・・・
どんな経緯があってそうなったのかは知らねぇ。
けど、あの時の城戸の泣き方は普通じゃなかった。
だから、澤村さんだって城戸をあんな風に隠して・・・
「岩泉さんに、お願いがあります」
岩 “お願い?・・・なんだ? ”
「城戸は、岩泉さんの知らない所で・・・一生分くらい泣いてるんです。だからもう、城戸が泣くのは見たくない・・・です」
俺は、例えアイツが泣いていようが関係なく・・・気持ちは変わらない。
だったらせめて、いつも笑っていられるようにしてやりたい。
俺はあの日、どんな形であれ城戸の側にいようと決めた。
だから、俺が何かしてやれる事があるなら、泣いたりする事だけは避けてやりたいんだ。
・・・岩泉さんの沈黙が、俺の呼吸を苦しくする。
岩 “ ・・・影山 ”
「はい」
岩 “ アイツにいつも笑っていて欲しいのは、お前だけじゃねぇよ。まぁ・・・俺が言えた事じゃねぇケドな ”
「・・・すみません」
岩 “ 謝る必要もねぇよ。それから影山・・・サンキュ。アイツの近くにいるのが、お前で良かった ”
「俺はただ・・・城戸に、」
ー あーっ!岩ちゃんこんな所にいた!探したんだからね! ー
この声は・・・及川さん?!
岩 “ ヤベッ、めんどくせーのが来た!悪ぃ、とにかくそういう事だ。じゃ・・・ ”
岩泉さんの言葉を最後に、通話が切れた。
とにかくそういう事だ・・・って。
・・・どういう事なんだよ。
脳内で軽く悪態をつきながら、ポケットにスマホをねじ込んだ。