第26章 交差する想い
慧太にぃの言葉に頷くと、私を病室に入れてドアを閉めた。
早く隠せよって言われても・・・
あ!
着替え出しとけって言ってたから、出した後にそこに入れとけば・・・
慣れない車椅子を動かしながら、ベッドまで移動する。
桜「慧太?戻って来たのか?で、紡は?」
慧「あぁ、いま着替えとかするのにオレ入れないから待ってるとこ。さすがに桜太も入室禁止だろ?鉄拳食らうぞ?」
ドアの外からは2人の会話が聞こえてくる。
・・・慧太にぃ、私は鉄拳なんかしないよ!!
桜「着替え?外来の先生からの連絡だと、シャワー浴したいから固定は病棟でって聞いてるけど?」
慧「そう言えばそうだったな。でも、紡も一応女子なんだし?着替えたいって言ってんだから、いいんじゃね?」
ナイス!慧太にぃ!
そんなやり取りを聞きながらも、私はいそいそと着替えを出して、代わりにお菓子を詰め込んだ。
桜「それは構わないけど・・・なんか怪しいなぁ?」
ヤバイ・・・
桜太にぃ鋭い。
慧「そんな事ないだろ?」
桜「じゃあ聞くけど・・・慧太はどうしてドアの前に立ちはだかってる?」
慧「たまたまだろ?」
・・・会話の雲行きが怪しくなってきた。
急がないと!
飲み物をサイドテーブルに並べ、鞄のファスナーを閉める。
よし、これで大丈夫。
ドアの前まで移動して、ひと呼吸してから声をかけた。
『慧太にぃ、準備終わったよー』
その声を合図に、慧太にぃがドアを開ける。
桜「着替えてたんじゃないの?」
さっきと・・・正確には昨日と変わらない私の姿に、桜太にぃが怪訝な顔を向ける。
『えっと、着替えようと思ったんだけど・・・やっぱりシャワーしてからにしようかなって思って、着替えの用意してた』
桜「そう?じゃ、シャワーなら部屋にあるんだから入っておいで?その間に準備とかするから」
『分かった』
着替えを抱えて、車椅子をぎこちなく動かす。
桜「紡?ここの売店は紡の好きなお菓子、たくさんあったでしょ?」
『うん!楽し・・・あ・・・』
慧「・・・バーカ」
しまった・・・
ついウッカリ返事しちゃったよ。
『シャワーしてきマース・・・』
この後のお積極に備えて、シャワーしながら覚悟を決めなければ・・・
気付かれないようにため息をこぼし、シャワー室へと入っていった。