第26章 交差する想い
『緊急連絡用とかで登録してるやつ?』
慧「そう、それな。それを見たら桜太のやつ、急にソワソワしだしてよ。そうかと思えば、いつの間にか出掛けてて、紡と帰って来て、オレはメチャクチャ笑えたよ」
そう言われてみれば・・・家に帰ったら慧太にぃは私達を見て、慧太にぃがやたらニヤニヤしながら桜太にぃに絡んでた事も思い出した。
・・・そういう経緯があったのか。
『慧太にぃは、寂しくなかったの?』
桜太にぃがいないのに、そんな秘密を聞いてしまったことのうしろめたさからか、慧太にぃにちょっと意地悪な聞き方をしてみた。
慧「オレ?ん~・・・どうだったかなぁ?なになに?そんなにオレの事が知りたいの?」
・・・うまく交わされた気がする。
『もういいよ、慧太にぃのイジワル』
プイっと前を向き直し、早く押してよと言う代わりに背もたれに寄りかかった。
慧「なんだよ、拗ねるなよ。ほら、そこに売店があるからお菓子買ってやる。だから機嫌直せよ」
『お菓子に釣られるようなお子様じゃありませーん!』
慧太にぃはすぐそうやって子供扱いするんだから!
今どきお菓子買って貰って喜ぶ高校生なんかいないよ!
・・・ん?
『慧太にぃ・・・やっぱりお菓子いる』
これから1週間は部屋から出られない事を考えると、今のうちに持ち込んだ方が・・・と思えた。
桜太にぃがいれば買い物くらいは頼めるけど・・・
お菓子買って~なんて言えば、ダメ!と言われるのが想像つくし。
ここは売店に寄ってくれると言い出した慧太にぃに甘えておくのが得策・・・
慧「紡、考えてることがバレバレだぞ。桜太に言えばダメ出しされるからオレに買わせようと企んでるだろ。顔に出てる」
・・・・・・。
ほとんど正解過ぎて、言い返せない。
慧「はいはい、分かりましたよ。桜太にバレないように隠しとけよ?」
黙り込む私の頭をポンッとひとつ叩き、売店へと入ってくれる。
そこで私はいくつかのお菓子と飲み物を買い込み、病室に戻る頃にはホクホクの笑顔が浮かんでいた。
慧「はいよ、到着~!お疲れさん、と」
ドアを開けるのと同じタイミングで、ナースセンターの奥から桜太にぃが出て来てしまう。
慧「紡、オレが足止めするから飲み物以外のお菓子、早く隠せよ?で、とりあえず着替え出しとけ。あとはオレに任せろ」