第26章 交差する想い
『慧太にぃ・・・こっそり帰っちゃダメかな?』
診察が終わって、ゆっくりと車椅子を押されながら、そんな事を言ってみる。
慧「桜太にしこたま説教される覚悟があるなら、オレは別に構わねぇよ?」
しこたま説教・・・
それはちょっと・・・イヤかも・・・。
既に慧太にぃが来る前に、それに近い恐怖を体験している私は、思い出して身震いをする。
慧「ま、しょうがないんじゃね?学校休めてラッキー!とか思っとけよ」
『それは慧太にぃだったらの話でしょ!私は学校行きたいの!ここに1人でいるとか・・・その・・・寂しいし・・・』
そう・・・寂しいよ。
昨日だって、凄く孤独で寂しかった。
場所が場所だけに、夜は異様なほど静かだし。
救急外来は、そうではなかったけど。
それなのに、あと1週間はお泊まりコースだなんて、絶対ムリ!
整形外科の先生の診察や検査は、私が想像していたものとは全然違う物だった・・・
いろんな角度に動かしたり、押されたりしながら触診されて、レントゲン検査室に行ったらありとあらゆる方向から何枚も撮影され・・・
やっと撮り終わったと油断したら、曲げたり引っ張られたりしながら更にレントゲン撮影され・・・
ストレス撮影、だったっけ?
なんか説明されたけど、何すんの!!ってくらい痛いし。
痛いの堪えてポロポロ涙出るし。
そのお陰で、いま・・・猛烈に足痛いし。
それでやっと外来に戻って診断結果待ってたら、自分で立てるようになるまでは最低1週間は入院継続してください・・・って。
捻挫ですよね?
捻挫で入院なんて聞いたことないです!
そう反論したものの。
捻挫の度合いが軽ければ、帰っていいですよって言うんだけどねぇ・・・とか呆れられたし。
その場で足を固定されそうになって、せめてシャワーしてからじゃダメですか?って懇願して診察室を出たんだけど。
・・・帰りたい。
慧「紡、寂しいのはお前だけじゃないからな?言っとくケド」
『え?』
慧「ぶっちゃけ、オレだってそうだって事だ。あと桜太もな」
『なんで?大人なのに?』
慧「あのなぁ、大人とか子供とか関係ないんだよ。同じ家に住んでる家族だろうが」
家族・・・確かにそうだけど。
だけど桜太にぃや慧太にぃは私と違って凄い大人だから、そんな事を思ったりはしないんだと勝手に思ってた。