第26章 交差する想い
~及川side~
「はい次まっつん!・・・さすが!今日も朝から絶好調!」
青城の朝は早い。
だからこそ、この朝練の時間に1人ずつトスを上げながら調子をよく観察しておく必要がある。
大会とかになると、会場によっては凄く早起きしなきゃダメだし。
そういう時の為の、言わば訓練も兼ねての早い時間からの朝練。
・・・眠いけど。
オレがそんな事を言ってられない。
目標の為に。
でも、その目標を応援してくれる中に・・・
紡ちゃんがいてくれたらいいのに、と、思ってしまう。
国「及川さん・・・次、イイっすか?」
「あっ、えっ?ゴメンゴメン!」
国「及川さんが考え事なんて、珍しいですね」
「そんな事ないよ~!いつでもみんなの事を考えながら及川さんは練習してるんだ・か・ら!」
危ない危ない。
国見ちゃんは昔から、無気力少年に見えて勘が鋭い時があるからね。
今だって、ほら。
なんかメチャクチャ怪しげな目でオレを見てるし。
「国見ちゃん?そんなに熱い視線を送られると、オレのハートが焼け焦げてしまうよ?そうなる前に、軽くハグでも・・・」
国「・・・ォェッ」
オエッ?!
「ちょっと国見ちゃん?!いま吐きそうになったでしょ!!聞こえたからね!聞いてる?!」
無表情でボールを手に持ちながら、既に国見ちゃんは我関せずな態度で順番を待つ。
「国見ちゃん?!」
岩「ウッセェぞボケ川!!真面目に練習しろや!!」
・・・岩ちゃんヒドイ。
オレはいつでも真面目だっつうの!
バレーの事も。
もちろんこれからは・・・紡ちゃんの事も、ね。
昨日の事から、岩ちゃんがピリピリしてるのは分かる。
元カノが自分の打ったスパイクが原因で倒れたり。
その後だって、部室でなんかイライラしてるし。
・・・人間サンドバッグされそうにはなるし。
未遂だったけど。
冗談とは言え、岩ちゃん目が笑ってなかった。
更に言えば、いつも一緒に帰ってんのに置いてきぼりされるし。
だけど、あの後すぐにオレは見ちゃったんだよね。
岩ちゃんが飛雄に電話してる所をさ。
あれには驚き過ぎて、声かけそびれた。
用事思い出したから先に帰るって出てった岩ちゃんを、オレも帰り支度を終えてから追いかけた。
岩ちゃんの用事なら付き合うからさ!って、言おうと思って。