第16章 初めの1歩
不意に包み込まれた、私の左手・・・
驚いて影山を見ても、何も表情を見せずに前を向いていた。
私はそっと自分の手を見つめながら、ゆっくりと静かに呼吸を整え顔を上げた。
澤村先輩と菅原先輩は、急に訪れた沈黙に戸惑うことなく、かと言って、それで?と踏み込んで来る事もなく、私が落ち着くのを待っていてくれた。
もう一度、静かに空気を吸い込む。
『・・・すみません。もう、大丈夫です』
深々と頭を下げ、謝る。
菅「紡ちゃん・・・オレさ思ったんだけど・・・」
菅原先輩がポツリと言った。
その言葉に、私は菅原先輩の顔を真っ直ぐ見て、表情だけで続きをどうぞ?と返す。
菅「なんて言うか、お兄さん達にも話してない事をオレ達が聞いちゃっていいのかな?・・・なんて。あ、いや、聞きたくないだとかじゃないんだけどっ。紡ちゃんが、そんなに泣くほど辛い事だったのに、聞いちゃっていいのかな・・・とか・・・」
ひとつひとつ言葉を選びながら、菅原先輩がゆっくりと話す。
私は菅原先輩が話し終わるのを待って、それから2人に向かって微笑んで見せた。
『今までずっと、1人で抱えて、笑う事も、笑い方さえも忘れて私は殻に閉じ篭っていました。でも、影山や日向君、それに菅原先輩達と一緒にいるうちに状況が変わった、と、いうか・・・』
私の話していることが、うまく伝わるだろうかか・・・と気になり、チラリと視線を流すと菅原先輩も澤村先輩も時折うんうんと頷いてくれていて、安心する。
『誰にも打ち明けられず、殻の中で縮こまっていた所に外側からつつかれたヒビの隙間から光が漏れだして、久し振りに光の眩しさを思い出して・・・』
・・・その光はまだ、私には眩し過ぎて。
手のひらで覆わないと、目が開けられないくらい、キラキラした光で。
『だから、最後まで聞いてください・・・』
私がそう言うと、澤村先輩達は、分かった、と、頷いてくれた。