第16章 初めの1歩
~澤村side~
・・・参ったなぁ。
まさか、こんな事になってしまうとは。
今、目の前の城戸さんは、マネージャーを引き受ける事が出来ない理由として、自分は中途半端で、そしてバレーを捨てた様なものだからと言った・・・
中途半端って、どういう意味なんだろうか。
少なくとも、俺が見た限りではそうは思えない。
日向達とボールを使っている時、楽しそうだったじゃないか。
それから、記録ノート。
あんな風に書く事が出来るのは、決して中途半端な気持ちではないだろうに。
城戸さんは俺にバレーが好きか?と聞いたように、逆に、バレーが嫌いになったのかと聞くと、一瞬、違う・・・と答えかけて口を閉ざした。
俺達の、後ろに目をやりながら・・・
振り返らなくても、そこに何があるかは既に分かっている。
あの、写真。
一緒に写っていたのは、俺の勘違いとかでなければ青城のバレー部員だ。
いつも及川と一緒にいる副主将の、名前は確か・・・岩泉。
スガは気が付かなかったのか?
いや、それよりも。
今のこの状態をどうするか?・・・だ。
何か声をかけた方がいいのか、黙って時間が経つのを待つ方がいいのか。
2つの内どちらかといえば、声を掛けてやる方がいいのだろう。
しかしながら、目の前で涙を流す女の子に掛ける言葉を俺は持ち合わせていない・・・
こういう時、スガならなんて声をかけるんだろうか?
そう思いチラリと横を見ると、スガはスガで何か声を掛けようとするも、なんて言ったらいいのか迷っているようだし。
どうしらいいのか迷っている時、スッと影山が動いた様な気がした。
それとほぼ同じくして、城戸さんが驚いた顔で影山を見た。
つられた訳ではないけど、俺も影山を見た。
・・・・・・・・・・・・・・・。
そうか・・・
そういう事か。
言葉なんか必要ない方法を、影山は知っていたのか。
いや、あれはきっと・・・
影山にしか今は出来ない方法かも知れない。
俺は見なかったフリをして、城戸さんが話し始めるのを待つことにした。