第16章 初めの1歩
~影山side~
城戸の部屋で、澤村さん達と話し合いをしている。
澤村さんが経緯を説明して、城戸も黙ってそれを聞いている。
そのやり取りを聞きながら、俺は澤村さんと菅原さんの間から見える、写真立てから目が離せなかった。
コイツ・・・
まだ、こんな物・・・
俺は、この写真を撮っていた事を知っている。
部活帰りに城戸と岩泉さん、それから及川さんが、途中にある公園で及川さんが無理やり2人を並ばせてるのを見かけた。
その頃の俺は、城戸が岩泉さんと付き合い出したことを知ったばかりで、城戸と少しだけ距離を置いていた。
城戸から話しかけられても、必要最低限な返答だけ。
岩泉さんの隣で、幸せそうに微笑んでいる城戸を見るのが、苦しかったから。
部活の時でさえ、隣のコートにいる城戸を見ないようにしていた。
そんな、ある日。
部活の休憩中に女バレの練習を覗き見ながら国見と金田一が話していた事に驚いた。
国「なぁ金田一」
金「あ?」
国「あれ、何してると思う?」
金「あれってなんだよ?・・・城戸?なんでセッターなんかやってんだ?」
は?
城戸がセッター?
金田一の言葉を聞いて、それを覗き見る。
アイツ、何してんだ?
リベロじゃなかったのか?
そう思った時、女バレも休憩に入った。
金「おーい、城戸~!」
金田一が呼び掛けると、城戸はマグボトルを抱えながら近づいてきた。
金「なんでセッターなんかやってんだ?お前リベロじゃねーの?」
国「しかもヘッタクソ~」
『うるさいなぁ!これから上手になるからいいの!』
金「で、なんで?」
『・・・ん~、まぁ、諸事情?』
城戸は苦笑いしながら答えた。
国「でも、この時期にポジ変えとか、誰かにマンツーで教わらない限りやばくね?」
いや、マンツーでも厳しいだろ。
例えコーチつけるにしたって、中途半端なヤツに教わったら意味ねぇだろ。
『その辺は大丈夫だよ。今日から及川先輩に特訓して貰う事になってるから』
は?!
なんで及川さん?!
どーゆー成り行きだよ?!
国「及川さん?!マジ?あぁ、遂に紡はお嫁に行けない体になるのかぁ」
『ちょっと!人聞きの悪いっ!ってか国見ちゃん、及川先輩の事をそんなふうに思ってたんだ?言いつけちゃおー』
国「待て、早まるな!」
『どーしよーかなー?』