第16章 初めの1歩
目の前にぬいぐるみを向けられ、大地もそれに視線を送る。
〖 紡ちゃ~ん Happy Birthday!〗
〖 大好きな紡ちゃんへ、海より深~い、愛を込めて♡及川さんより♡〗
大地が声に出して読み上げ、お互い顔を見合わせ、照れる。
「ちょっと大地・・・恥ずかしいことサラッと言うなよ」
澤「ばっ、違っ!俺は書いてある事をだなっ!」
お互いそんな言葉に免疫がないからか、顔を背けながら口元を隠す。
ほんの少しの沈黙のあと、オレはぬいぐるみをそっと元に戻した。
澤「まぁ、アレだ。その・・・見なかった事にしよう・・・」
ポツリと大地が言い、オレも無言で頷いた。
こんな、お互い微妙な空気の時に紡ちゃんが戻って来たら、変に思われるよな。
・・・深呼吸でもして落ち着いておこうか。
そうして何度か深呼吸を繰り返していると、紡ちゃんと影山が戻ってくる音が聞こえて来る。
「大地、とりあえず座っとかない?」
そう言って2人で座る。
大地が礼儀正しく正座なんかするから、オレもそれに並んで同じように座った。
「なんで正座なんだよ?」
そう聞くと大地は笑いながら、まぁいいじゃん?と返す。
女の子の部屋にデカイ男が正座とか、笑っちゃうよなっと返した所で、部屋のドアが開けられた。