第16章 初めの1歩
~菅原side~
『すぐ戻りますから』
そう言って、紡ちゃんは影山を連れて部屋から出ていった。
適当に寛いでてくださいって・・・言われてもなぁ・・・
見るからに女の子の部屋ってトコに、オレと大地と、2人。
大地を見ると、大地も何となく落ち着かない空気を纏っている。
澤「なんか、アレだな」
「だね」
たったそれだけのやり取りで、お互いの言いたい事が伝わる。
キレイに片付けられている部屋。
ベッドサイドには、紡ちゃんが好きなんだろうぬいぐるみが所狭しと並んでいる。
机なんかも、ホントに整理整頓されて、オレの部屋とは大違いだ。
ソワソワしながら見ていると、大地のため息が聞こえた。
澤「スガ、女の子の部屋をあちこち観察するなって。部屋の主がいないんだし」
「あはは、そ、そうだよね」
そう言われ、元気よく1歩下がった時。
“ カタッ ”
音がした方を思わず振り向く。
見ると、サイドボードの上に並べられた写真立てを倒してしまっていた。
やばっ。
澤「全く・・・落ち着けって」
大地の呟きを耳にしながら、倒してしまった写真立てを、元に戻そうと手に取る。
「あれ?紡ちゃん?」
思わず声を漏らし、手の中の写真立てを見た。
澤「おい、スガ。勝手に見たらダメだって」
言いながらオレの方に近づく大地に写真立てを向ける。
「大地見て?これ紡ちゃんだよね?」
澤「だから、見るなって・・・」
小さく息をつきながらも、大地もチラリと目をやる。
写真の中の紡ちゃんは、今とは全然違う雰囲気で、長くてサラサラのストレートヘアで幸せそうに笑っている。
・・・ん?
隣に写ってるヤツ・・・
どっかで見たことあるような・・・?
ん~・・・誰だっけなぁ・・・
2人で並んでいて、紡ちゃんのこの笑顔を見ると・・・まさかの彼氏?!
ウソっ?!
紡ちゃんの隣に写るヤツは、誰から見てもぎこちない笑顔と距離感で、まるで付き合い始めたばかりの恋人同士のように寄り添っている。
急に、指先の温度が下がっていく感覚がした。
オレはそっと写真立てを元の位置に置いた。
何気なく、隣に並べられたウサギのぬいぐるみを、そっと撫でた。
・・・って、えっ?
「大地?・・・及川って、確か青城の・・・?」
澤「ん?」
大地に声をかけ、ぬいぐるみを向ける。