第16章 初めの1歩
ここじゃ、まともに話が聞けないかも知れない。
澤村先輩達も、これから話をする相手の保護者が間近にいると、言い難い事も出て来るかも知れない。
何より、私でさえ桜太にぃや慧太にぃに聞かれたくない事があると思う。
伏せてまま、ため息を吐いた。
菅「紡ちゃん?大丈夫?」
視線だけを動かすと、菅原先輩が同じように伏せて私を見ていた。
・・・よし、決めた。
私はガッと勢いをつけて顔を上げた。
『場所、変えませんか?』
私が言うと、誰よりも早く慧太にぃが反応する。
慧「今からどっか出掛けんのか?」
『そんな訳ないでしょ。私の部屋』
慧「紡の?!」
『別に平気だよ?ここで話すより、お互い話しやすいと思うし・・・澤村先輩、いいですか?』
澤「えっ?、あ、まぁ、城戸さんが良ければ・・・」
急に話を振ったため、澤村先輩が慌てながらも返事をくれた。
『じゃあ、行きましょ?案内します』
そう言って立ち上がると、澤村先輩達もそれに続いた。
リビングを出て2階へ上がり、私の部屋のドアを開ける。
電気をつけてから、あっ?!と、気がついた。
部屋で話すのはいいけど、私の部屋って・・・ミニテーブルとかないんだった。
思い付きのように部屋に案内した事を少し後悔する。
菅「紡ちゃん?」
一向に部屋に入ろうとしない私を気にして菅原先輩が呼びかける。
『すみません。テーブル持ってくるの、忘れちゃって。すぐ、持って来ますから、適当に寛いでて下さい。あ、影山は一緒に来て?テーブル運ぶの手伝って欲しい』
影「わかった」
『すぐ戻りますから』
そう言って澤村先輩と菅原先輩を残し、影山と一緒に桜太にぃの所へ戻った。