第16章 初めの1歩
『何度もお待たせしてごめんなさいっ・・・て、正座なんかしてどうしたんですか?』
ドアを開けた目の前に澤村先輩も菅原先輩も、なぜか正座で待っていた。
菅「いや、なんか女の子の部屋なんて入った事ないから・・・な、大地?」
菅原先輩が頭を掻きながら答える。
『そんな、たいした部屋じゃないですから』
私はそう言いながら、影山にテーブルを運び入れて貰い、4人が座れるように置いてもらう。
ちょこっと使えるサイズのミニテーブルは、慧太にぃが部屋で使っていたから、仕方なく桜太にぃの部屋から長方形のテーブルを借りてきた。
その為、必然的に私と影山が隣同士に座り、向かい合うように澤村先輩達が座る。
さすがにテーブルだけで、という訳にはいかないなと思って用意してきた飲み物を並べ、話を聞けるように腰を落ち着かせた。
『澤村先輩、それで、お話っていうのは・・・』
澤「あぁ、まぁ、うん・・・それなんだけど・・・」
澤村先輩はノートの書き方や、3対3の時の様子などを理由に並べ、私にマネージャーとして入部して欲しいとストレートに伝えて来た。
『どうして、私なんですか?マネージャーなら清水先輩だっているのに』
別にマネージャーが1人じゃなけゃいけないと言う理由はないけど、どうして自分が話を振られているのかという、ちゃんとした理由が聞きたくて問いかける。
菅「それはね、紡ちゃんが先輩後輩とか関係なく、同じ目線でいてくれるから・・・かな?」
同じ・・・目線?
澤「スガの言う通り、それもある。でも、それだけじゃないんだ。清水はいつも頑張ってくれてるけど、俺達と同じ3年だから同じように引退だってする時期が来る」
『清水先輩の・・・後釜が欲しい、だけですか?それで、手っ取り早く身近にいた私が目に留まった、それだけジャないんですか?』
私が放った言葉で、その場が静まってしまった。
失礼な言い方をしてしまったな、と思う。
でも、単に後釜が欲しいだけなら、他を探せばいい・・・そんな事を考えていた。
澤「・・・確かに、そう思われても仕方のないタイミングかも知れない。だけど、俺には・・・俺達には、城戸さんの存在自体が、必要だと思ったから・・・」
苦い顔をしながら、澤村先輩が言葉を絞り出す。
菅「大地・・・」
心配そうにみんなの顔色を見た菅原先輩がうなだれる。
