第39章 聳え立つ壁
東峰先輩の言葉にふたりが声を揃えて言う。
旭「なんでだ?大地がお父さんでスガがお母さんだったら、後の役目はお兄さんくらいじゃないのか?」
菅「旭、お前忘れてないか?紡ちゃんにはちゃんとハイスペックなイケメンお兄さんがいるってこと!あのふたりに比べたら旭がお兄さんだとかナイナイ」
澤「だな。だいたいヒゲちょこでガラスハートな兄なんてないだろ」
旭「で、でも!前に城戸さんには間違えられたことあったし!」
『東峰先輩それはもう忘れて下さいって言ったのに!』
私の黒歴史のひとつを声を上げて言う東峰先輩に慌てながら言えば、そうだっけ?とイタズラな笑いを見せる。
『あれはたまたま偶然が重なって慧太にぃと間違えちゃったんです!』
菅「だってさ、旭?」
澤「後ろ姿 “ だけ ” は確かに慧太さんに似てるからな」
菅「そうそう。後ろ姿 “ だけ ” 、なんだよな」
旭「そんなに “ だけ ”を強調しなくても良くない?!」
伊達工に勝つ。
ひとまずの目標を超えた3人がいい感じでリラックスして話をするのを聞きながら、本当は後ろ姿だけじゃないんだけどね?と心の中で思う。
あの普段はイタズラギャングのような慧太にぃでさえ、傷付き悲しんでいた時もあったって桜太にぃに聞いたことがあるから。
なぜそうなったのかは私が小さい頃の話だからと濁されたけど、それでも人は誰しも自分にしか分からない理由で胸を痛める事があるは事実でもあって。
ドアの向こうで始まりつつある青城の試合を、つい足を止めチラリと見て、私もその中のひとりだったんだと実感する。
澤「アイツら放置してるのも清水が大変だから、行こうか」
『・・・ですね。清水先輩だけだと田中先輩や西谷先輩が暴走しそうだから急がなくちゃ』
菅「あの2人は清水がいれば安心って感じもするけどね」
やれやれとわざとらしく息を吐く菅原先輩に背中を押されるようにして、みんなが待つ所へ私達は足を早めた。