第39章 聳え立つ壁
その腕先を辿って顔を上げれば、そこにいたのは。
『東峰、先輩・・・』
旭「走ったら危ないからねって、さっきあれほど言ったのに困ったマネージャーだな、キミは」
『すみません、本当に』
日々いろんな人にそそっかしいからと言われていることを考えて肩を落としながらも謝る。
旭「ま、それもうちのメンバーが城戸さんを構いたくなる理由でもあるかな?って。ほらね?」
東峰先輩が振り返る方向を見ると、そこには早足でやってくる澤村先輩と菅原先輩が見えて。
『やっば・・・また大地さんに怒られる・・・』
ちょっとした焦りで思わずそんな言葉が零れてしまう。
二「つーかさぁ?そこで盛り上がっちゃってるのはイイけど、連絡先はよ?」
茂庭「二口!」
こっちの問題は終わってなかった!
旭「その件は、マネージャーではなくうちの主将と話を付けてもらいたい。本当にケガをってなると、この子だけの問題じゃない」
『東峰先輩、それじゃ大地さんに迷惑が』
旭「大丈夫。そういう時のためにも、大地みたいな立場が必要なんだよ。それだけで終わらないようなら、武田先生だっている」
だから大丈夫だよ、と東峰先輩は笑って見せた。
澤「旭。急に切羽詰まって駆け出すな」
菅「ホントそれ!で、紡ちゃん、これはどう言う状況?」
『それは、その・・・』
はぁ、と大きく息を吐く2人に若干腰が引けながら事の詳細を説明すれば、だから普段から言ってるのにと澤村先輩が更に大きな息を吐いた。
澤「本人から事情を聞くあたり、こちら側の責任問題でもある。だから連絡先をと言うなら、彼女ではなく俺がそうします」
茂「いえ、二口もケガした訳じゃないし大丈夫なので。ただ、今後もし機会があれば練習試合とかお願いしたい時もあるかも知れないということで、連絡先を交換して貰えるなら、そこは是非」
澤「そういう事なら、烏野もこれから先を考えたら有難い事だから連絡先は・・・っと、スマホはない、か。紡、紙とペン出して」
『あ、はい!』
澤村先輩に言われ、手持ちのノートを1枚切り離し2枚に分け、そこにボールペンを添えて手渡す。
澤「これが自分の連絡先です。良かったら、そちらのも」
澤村先輩が紙と一緒にペンを差し出せば、伊達工の主将も同じように連絡先を書き、その下に二口と呼ばれる人にも連絡先を書くように促した。
