第39章 聳え立つ壁
試合の前に東峰先輩に言われてたのに、なんで走ってしまったんだろうかと、いま最大に後悔する。
しかもその相手が、今さっきまでネットを挟んで試合をしていた伊達工の人だとか!
『本当にすみませんでした!急いでいたとは言っても周りをちゃんと見てなくてぶつかってしまってごめんなさい!』
最初に謝ってから3回目にもなるごめんなさいを言えば、その相手は今も脇腹辺りを大袈裟な位に押さえて・・・いやいや、本当に痛かったのかも知れないけど。
それにしたって表情はどことなく口元がニマニマとして壁に背を預けている。
本当にそこまで痛かった?と聞かずにはいられない状況でもあるけど、ぶつかってしまったのは私だから言えるはずもない。
二「あー痛い痛い。痛くて動けないなぁー、うん。あ、そうだ!もし病院に行った時のためにおチビちゃんの連絡先とか教えて欲しいなぁ」
・・・痛くなさそう?!
これってもしかして私の連絡先が欲しいだけの演技?!
とは言え本当に痛かったとしたら教えないのもおかしな話だけど、どうしたらいいんだろう。
あ!そうだ!!
『あの!もし病院に行ったとしたらじゃなくて、行って下さい。病院と医師を紹介するので・・・今のところ専門はその、小児科、ですけども・・・』
二「は?小児科?なんで小児科?もしかしてオレの事バカにしてるわけ?」
『違います!小児科医師ではありますけど、ちゃんとそういう怪我とかも見てくれますから、だから、』
二「いやいやいや?病院は自分で行くからさ、ほら?何かあったときの為に連絡先教えてよ?」
茂「二口!お前いい加減にしろよ。ちょっとぶつかった位で病院なんか行かないだろ。さっきの衝突なんか試合中の飛び込みに比べたらなんともないだろ!・・・ったく、すみませんウチの二口が」
『あ、いえ・・・でも、もし本当に怪我をさせてしまったなら悪いのは私ですから』
気にしないで?と言うように伊達工の主将が言えば、それがまた気に入らないのか二口と呼ばれた人がヤレヤレと壁から背中を離す。
二「茂庭さーん、おチビちゃんもこう言ってるしさ?連絡先貰うくらいいーじゃん?この先、烏野と繋がり持ってたってバチ当たらないっしょ。ってなコトで、ほら早く早く」
『わかりま、』
「その必要はないよ」
私の返事を遮るように、大きな手が私の肩を掴む。
