第39章 聳え立つ壁
~ 菅原 side ~
旭が完全復活してくれて、あの伊達工に勝った。
これは旭だけじゃなくて、落ちぶれてたって言われ続けた烏野の自信にも繋がったと思う。
本当だったらこの試合、オレも大地や旭と同じコートに立ちたかったけど。
でも、今この一瞬の気持ちよりも。
オレはこの先にあるチャンスを掴みたい。
大地と、旭と。
・・・みんなと一緒に掴むカラーコートへの切符。
それを掴むためなら今は試合に出れなくたって問題はない。
このまま青城も白鳥沢も倒して、突き進みたい。
・・・なんて、カッコイイこと言ったって。
本当は試合に出たいって言うオレも、心の奥では膝を抱えてたりする。
烏養コーチに勝つ為にオレより影山が必要ならって直談判したあの夜、あの気持ちになるまでにいくつもの葛藤はあった。
天才肌の影山のことは、ちゃんと分かってる。
けどオレだって、そこまで築いてきた信頼関係だってあるんだから。
「あと、ふたつ」
誰に言うわけでもなく呟けば、前を歩いていた大地と旭が揃って足を止め振り返った。
澤「あぁ、そうだな」
旭「あとふたつ勝てたら、そしたら、」
澤「勝てたら、じゃない。勝つんだよ、俺達みんなで」
だろ?とオレに笑いかける大地に大きく何度も頷き返す。
澤「さ、早く戻ろう。きっとベンチに入れなかった元気なマネージャーが首を長くして待っ・・・お出ましのようだな」
観覧席に続く廊下の先を見る大地が、今よりもっと分かりやすく笑って、ほら?とオレたちを促す。
促されるように視線の先を辿れば、紡ちゃんがいつも肩から下げてるマネージャー道具を大きく揺らしながら走って来る。
旭「あんなに走ってたら危な・・・あ、言ってる側から」
「ホントだ。って、あれ伊達工のメンバーじゃない?」
紡ちゃんがぶつかってしまった相手は、まさに今さっきまでネットを挟んだ向こう側にいた伊達工のヤツらで。
澤「なんだか様子が変だな。ちょっと様子見て・・・おい旭?!」
大地が紡ちゃんの所に行こうと1歩を踏み出すより早く、旭が駆け出して行く。
「大地、オレ達も行こう」
澤「あぁ。清水、ちょっと行ってくるから後を頼む」
大地の声に頷く清水を見て、オレと大地も旭が向かった方へと足を早めた。