第39章 聳え立つ壁
1度走りを止めたペンを握り直し、コートとノートを代わる代わる見ては記録を付けていく。
烏野と伊達工は数点ずつ交互に得点を重ねていて、だけど今は、烏野が少しリードしてる。
その目線の先に、何度も止められてはまたスパイクを打つ東峰先輩の姿があった。
この試合、誰よりも苦しいのは東峰先輩だ。
どんなに苦しくても、どんなにしんどくても、エースである以上はボールが集まる。
それを1度避けてしまった事を悔やんでいた東峰先輩を、誰一人として責めたりはしなかった。
少しくらい気持ちのすれ違いはあっても、ちゃんと向き合うことで解決して。
だからこそ、またコートに戻って来てくれた。
武「烏野にだって壁はあるんです!!」
誰より大きく叫ぶ武田先生の声が届き、その言葉通り東峰先輩と月島君のブロックが伊達工の速攻を止めた。
嶋「っしゃぁ!ブロックポイント!」
嶋田さんの声に思わず大きく息を吐く。
危なかった・・・今の決められてたら点差が縮まってしまうところだった。
滝「あと6点、前衛にいる内に決めろよチビ助」
あと少し、あと少しでこの苦しい戦いが終わる。
だけどそう思うのは私達だけではなく伊達工サイドだって同じ。
だから烏野がボールをどれだけ打ち込んでも、拾っては繋いでは烏野のコートへとボールを叩き込んでくる。
もし、このセットを伊達工に取られてしまってフルセットに持ち込まれたら烏野としてはかなり厳しい状況に追い込まれる。
それこそ広げた翼を折られるどころか、もぎ取られてしまう。
だからこそ2セット連続で取って終わりにしたい。
まだ、影山と日向君の速攻の効果が続いているうちに。
ー ピッ ー
月島君のサーブがキレイな曲線で進みながら伊達工のコートへと放たれる。
それはしっかりと向こうのコートで処理され、烏野のコートへスパイクされた。
一瞬ヒヤリとするも、東峰先輩がレシーブでボールを上げ、すぐに影山が動く。
誰にトスを?そう思った瞬間、日向君が大きく叫び走り出した。
日「持ってこーい!!」
ー ピッ! ー
・・・よしっ!
大会が始まる前に、日向君が影山にこっそり何度も確認していた事を思い出し、ちゃんとまだそれが機能していることに小さく頷く。
日向君の叫ぶ、その言葉。
それによって影山もトスを上げる相手を見極めていた。