第39章 聳え立つ壁
試合に負けたことは気にすんな、また次に頑張ればいいじゃないか。
そう言えたら、少しは変わっていたかも知れないのに。
それが出来なかったのはオレ自身が心のどこかで、あの時に旭がスパイク決めていたら試合の流れが違う方向に流れていたかも知れないと、思っていたからだと思う。
けど、今はあの時とは違う。
新入部員として影山達が入部して、その影山も日向も月島もスタメンとしてコートに立っている。
1年の中で山口だけはまた公式戦でコートに入ってはいないけど、それだってこれから先たくさん練習したら即戦力になる可能性だって充分にある。
それに烏野には新しくコーチだって入った。
紡ちゃんもマネとして来てくれて、その繋がりで桜太さんや慧太さんも時間がある時は練習を見に来てくれている。
だからといって急に烏野が昔のように強豪の仲間入りができる訳じゃないけど、少し前の烏野と比べたら全然違うんだから。
・・・勝ちたい。
体に沿った手をグッと握りしめ先の未来へと思いを馳せれば、目の前に落ちる人の影。
澤「スガ、コートチェンジだ。ぼんやりしてると置いてくぞ?」
「あのさ、大地。オレ、」
澤「分かってる」
また大地や旭と一緒にコートに立ちたい。
そう言いかけたところで大地が真っ直ぐにオレの顔を見る。
澤「分かってるさ。スガが考えてる事は言わなくても、な?その為にはまず、ウチのエースにしっかり働いて貰わないとだ」
旭「が、頑張ります・・・」
西「旭さん!そんな弱気な頑張りますはいらないっスよ!エースなんだからもっと強気で行きましょうよ!」
旭「痛っ!・・・西谷はホント容赦ないな」
バシッと叩かれた背中を伸ばし、旭が苦笑を見せる。
澤「さぁ、次のセットもこのまま取るぞ!」
「「っス!!」」
移動し始めていたメンバーも大地の声に返し、足早にネットの向こう側へと移動して行く。
「大地、コートの中は・・・頼んだ」
澤「おう」
言いながら大地に手を掲げれば、大地がそれに応える。
その音は大きな会場の中で、オレ達にはハッキリと聞こえるほどに力強く響いた。