第39章 聳え立つ壁
嶋「あれは、音駒がやってたパイプ!」
嶋田さんも身を乗り出すかのように声を上げ、そして私を見た。
『音駒との練習試合の後、東峰先輩や日向君が何度も練習を重ねて来たんです』
嶋「繋心のやつ、飲みの席でもそんな事チラッと言ってたな。烏野が勝つためにはどんなことでも取り入れるんだとか」
『ですね。伊達工を倒しても、その先にはまだ青城や白鳥沢が控えてますから。ただ・・・』
嶋「ただ?」
今の東峰先輩ので烏野の攻撃パターンは全部出してしまった。
だから・・・
『手の内を全部見せてしまったも同然だから、優勢だとは言い切れません』
そう告げると嶋田さんもひと言、あぁ、とだけ呟いてまたコートへと視線を戻した。
日向君と影山の超速攻。
東峰先輩の新しい攻撃パターン。
それから、アチコチに青アザを作りながらも練習して来た西谷先輩のブロックフォロー。
澤村先輩の安定のレシーブ。
そのどれを取っても伊達工に負けてはいないと思う。
だけど、大会試合となるとそのチームプレイの歯車が上手く噛み合わなくなる時だってある。
だからせめて先にこのセットを取って欲しい。
そう願いを込めながら、記録を取るボールペンをぎゅっと握りしめた。