第39章 聳え立つ壁
その声が届いているのかは分からないけど、それでも道宮先輩も、他の女子部員も、私も・・・精一杯の気持ちを届けようと試合の流れを見守る。
それでも急な展開が訪れることはなく、見ている私達さえ、呼吸が苦しくなる流れが続いた。
日向君と影山のコンビプレイで烏野が少しリードしてはいても、それでも東峰先輩にはブロックが張り付き気持ちのいい点は取らせて貰えない。
「二口ナイッサー!」
またあの人のサーブか。
勢いよくボールが打ち込まれる先に視線を送れば、その落下点に澤村先輩が入り込みレシーブでボールを上げる。
澤「スマン!カバー!」
崩れかけたボールの軌道に田中先輩が合わせるのを見て日向君が準備に入る。
日「センター!!」
田「日向!」
田中先輩がレシーブで日向君へとボールを繋ぎ、日向君がスパイクモーションに入る。
道「ブロックが!!」
当然のように日向君についたブロックで、打ち放ったボールは烏野のコートへと弾かれるも、西谷先輩が素早くそれに飛びつきボールが上がり着地した日向君が走り出す。
西「っしゃァァァァ!影山!!」
「なんかバタバタとみんな動き出したけど?!」
道「でもあの小さい子も走り出してる!じゃあまたあの速攻?!」
確信は持てないけど・・・多分、違う。
いまこの場面でトスを上げるとしたら。
ブロックを交わして得点へと繋げるとしたら、きっとそれは日向君じゃなく。
日「持ってこ―――い!!」
叫び声を上げながら、日向君が大きく飛びスパイクモーションへ入る。
道「またブロックが!!」
「待って!トスが間に合ってない!!」
全力で飛んだ日向君に影山からのトスが上がらないままに大きく腕は振り下ろされる。
道「空振った!!」
空振りなんかじゃ、ない。
だってその後ろには、影山からのトスに合わせて床を蹴る東峰先輩がいるから。
目の前の一瞬一秒が、まるでスローモーションのように流れて行く。
大きく歪むことのない放物線を描きながら、ボールが東峰先輩へと向かう。
それは鉄壁と呼ばれる伊達工のブロックよりも高く高く上がって、視野が広くなったエースの元へとゆっくりと届いて、そして・・・打ち放たれたボールは、会場中に響き渡るような音をさせながら伊達工のコートへと落ちた。
繋「よっしゃァァァ!!」