第39章 聳え立つ壁
恐らく今までは、影山が来るまでは当たり前のようにコートにいただろう菅原先輩がそこにいない事に気付いた道宮先輩が呟く。
3年は、これから先のひとつずつが最後になって行くと言った清水先輩の言葉が頭を過ぎった。
何か言った方がいいのだろうか。
でも、何を話せばいいのだろうか。
そんな戸惑いが押し寄せ、口を開こうとしても上手く言葉に出せない。
そんな瞬間、影山と日向君のコンビプレーがまたも烏野へ点を稼ぐ。
嶋「っしゃ!うんうん、今日もあの1年コンビ調子良さそうじゃん!」
滝「だな!3年セッターの安定したプレイも捨て難いけど、あの影山とかいうセッターはやっぱスゲーよな!」
烏野が点を取る度に湧き上がる嶋田さん達の声に、道宮先輩が菅原先輩へと視線を落とし小さく息を吐いた。
道「そっか・・・そういう事なんだ。菅原のお人好しも、ここまで来るともう、」
『お人好しなんかじゃないです。菅原先輩は、菅原先輩なりに悩んで、迷って、それでも自分達がひとつでも前に進めるにはどうしたらいいか考えて・・・』
あの夜。
繋心に試合を勝ち進むために今の烏野に影山が必要なら、迷わずそうして欲しいって直談判までした菅原先輩の気持ちを考えると、最後までコートに立つことが出来るか分からないのに影山を使って欲しいと言った姿が、鮮明に浮かんで来る。
道「ゴメン、変なこと言って。だから泣かないで」
泣いてなんか、と言いかけて、自分の視界が滲んでいることに気付く。
『あ、あれ・・・?なんでだろ・・・やだなぁもう、泣いてる場合じゃないのに』
ゴシゴシと手の甲でそれを拭い取り、キュッとペンを握り直す。
道「私達が早くもここに来てるって事は、もうその結果は城戸さんなら、分かるよね?」
私の肩に手を置いた道宮先輩が、その手にギュッと違う力を入れたのを感じて躊躇いながらも頷いてみせる。
道「私達は私達なりに最後の瞬間まで粘って、ボールに食らいついて。そして今、ここにいる。これから先なんてまだどうなるか分からないけど、今出来ることは・・・最後の瞬間に笑いながら、肩を叩き合う姿を見れるように精一杯の気持ちを込めて応援する事だよね」
『・・・はい』
道「よし!じゃあさっそく・・・澤村ナイッサー!!!」
道宮先輩が再びコートに顔を向け、今まさにサーブに立とうとする澤村先輩に声援を送る。
