第33章 それぞれの覚悟
桜「ね?俺が言った通りでしょ?」
にこやかに言う桜太にぃに、みんなが笑顔で返事を返す。
桜太にぃが私に言ったこと···それは。
桜「とにかくボールを落とさない事。それが紡のコートの中での仕事だよ···大丈夫、紡なら絶対出来る」
『でも、もし弾いたりしたら···』
桜「その時はその時に考えればいい。やる前から失敗した時の事を思い浮かべたら、気持ちがそっちに引き寄せられるから。そうだ、西谷君や音駒のリベロ君、彼らの動きを思い浮かべたら、いい感じになるんじゃないかな?」
『音駒の、って···夜久さんのこと?いきなりお手本がハイレベルなんだけど』
桜「お手本はハイレベルの方が上達するんだよ」
その後すぐにコートに入ることになって、今に至る訳だけど。
まぁ、今の試合はひたすらレシーブだったけど、それをちゃんと繋いでくれてギリギリではあったものの···とりあえず勝ちを得た。
いまやってる試合が終わったら、また烏野チームの試合になるけど···あれ?
いつの間にか主審が澤村先輩に代わってる?!
サッと反対側を見れば、副審は代わってない。
···ってことは。
ー だぁ~れだ! ー
さっきまで主審の位置にいた人物の居場所を確認しなきゃと見回すより先に、私の視界が遮られる。
いきなりこんな事をするのは、私の周りで思い当たるのは2人だけ。
1人は菅原先輩。
そしてもう1人は···
『···及川先輩ですね』
及「正解!···紡ちゃんの愛の力は凄い!」
いえ···そんなものはないです。
『大地さんといつの間に主審交代したんですか?』
及「試合開始からずっとだったから、疲れたって言ったら岩ちゃんがキャプテン君を呼んでオレに休憩をくれたんだよ」
『でもハジメ先輩は副審やってますけど』
及「そこはほら、岩ちゃんだから」
···意味分かりません。
『とりあえず、そのいつまでも私の目を覆ってる手を離して下さい』
及「ちぇ~···紡ちゃんのケチ。じゃ、ギューッに変更!」
菅「そうはさせないから」
私の視界がクリアになると同時に、スッと伸びてきた腕に引き寄せられる。
『スガさん?···大地さんは主審なのにスガさんはフリーなんですか?』
主審をしている澤村先輩に視線を送りながら言えば、菅原先輩はフッと怪しく微笑んで胸を張った。