第32章 不協和音
~ 道宮side ~
練習を始めて思った。
あの子···凄い。
みんなの中に入って練習したのは今日この時間が初めてなのに、最初はしばらく見学させて欲しいって言うからオッケー出してたけど。
その後!
スパイク練習からコートに入ってくれたんだけど、トス上げてくれる高さがほぼウチのセッターと変わんないタイミングと高さで上げてくる。
菅原が言ってた秘密兵器って、こういう事なの?!
増々、男バレのマネだけやってるとかもったいないよ!
あの子は、どんな理由で···男バレのマネやってんだろう。
確かに男バレは今まで、マネは清水さんひとりでやってたけど。
噂では清水さんがマネになる前までは、そういう存在ってなかったみたいだし。
だったら、人手不足ってことは考えにくいよね?
やっぱり···澤村が、いるから?
いつか見た、仲良さそうに並んで歩く2人の姿を思い出して···チクリと胸が痛くなる。
とか言ってる場合じゃなーーーーい!
せっかく助っ人に来てくれてるんだから、週末の交流戦···1回でもいいから勝ちたい!
その為には、練習、練習、練習あるのみ!
って言ったところで、指導者はナシだからなぁ。
いっそ1日だけでも男バレのコーチにお願いしてみようかな?
···だけどあのコーチ、見た目が派手っていうか、金髪だし、ピアスだらけだし言葉遣いとかヤバい感じだし、なんかこの前すれ違った時タバコ臭いし。
もしかして···元ヤン?
澤村達はどうやってコーチをお願いしたんだろう。
お、お金払ってる···ワケじゃないよね?
『あの。道宮先輩、どうかしましたか?』
ひとり百面相をしていると、ボールを持った城戸さんが声をかけて来た。
「あ、ごめん!ちょっと考え事しちゃって。次もしかして私の順番だった?!ホントごめん!」
主将の私がぼんやりしてちゃダメじゃん!
そう思いながら気合いを入れ直したところで体育館の入口に現れた人影に足を止めた。
菅「やっほ!ちょっとお邪魔してもいい?」
「菅原に澤村?そんな所でなにしてんの?男バレは休憩中?」
菅「違うけど···道宮達にはいい話を持って来たんだよ」
いい話?
澤「あ~、詳しくは説明するから。じゃ、どうぞ」
「ありがとう」
そう澤村に案内されて入って来た人は···見た事がない人だった。