第32章 不協和音
女子部が使う体育館の前まで来て、ふと足を止める。
なんだろう、この変な感じ。
気持ちにフッと、影を落とす感じ。
『ねぇ影山?なんかさ、』
そこまで口に出して、気付く。
そっか。
私も···みんなと離れて、寂しいんだ。
一人で飛び込む、知らない世界。
バレー自体はそうじゃないけど、関わりがなかった人達の中に···自分一人で飛び込む覚悟。
男子バレー部での3対3ゲームまでの時は、いつだって隣に影山がいて。
入部してからは、澤村先輩や菅原先輩を初めとしたみんながいて。
澤村先輩は、あの時だって···そばに、いてくれた。
影山がいないって思うだけで、どうしてこんなにも心細く感じるんだろう。
澤村先輩がいないって思うだけで、どうしてこんなにも···前が見れないんだろう。
それはきっと。
私がいつまでも頼り過ぎてたから?
だからあんな風に背中を向けられたみたいなのが、寂しいって···思ったんだ。
なんだ···ダメダメなのは、やっぱり私じゃん。
一緒に走るって決めたのに、いつまで手を引かれ手ばかりじゃ、背中を押されてばかりじゃ、ダメだ。
ここは1人でも頑張ってイイトコ見て貰おう!
ん~、なんかちょっと方向性がズレたかもだけど。
ひとり苦笑して来た道を振り返り、今頃アップが始まってるんだろうなぁ···と思いながら小さなガッツポーズをする。
『よし!いざ体育館の中へ!私は頑張るって決めたんだから!』
道「そうそう!頼りにしてるよ!」
ポンッと肩を叩かれ、隣に立つ道宮先輩に驚く。
『み、道宮先輩?!いつからここに?!』
道「いつからって···城戸さんが何か考え込んでる辺りから、かな?なんか複雑そうな顔してたから、声掛けづらくて」
『アハハ···すみません』
クヨクヨしてたの、見られてた!
道「澤村とは仲直り出来た?」
『あ···いえ、まだ···でも、さっき体育館寄った時、何も言われませんでしたけど···ポンッって頭に手を乗せられました』
道「澤村が?!···あの澤村が?!」
びっくりして大声になる道宮先輩に、はい、まぁ···と曖昧に返事をした。
道「そっか···あの澤村がねぇ···じゃ、もう大丈夫だよ、きっと!さ、中に入ろう?」
そう言って背中を押す道宮先輩は、どこか悲しそうな瞳をしていた。