第32章 不協和音
道「菅原に澤村?そんな所でなにしてんの?男バレは休憩中?」
コーチに入りかけた道宮先輩が足を止め、体育館の入口に顔を向けた。
いくら休憩中でも2人揃ってここまで来るとか、余程の用事でもない限りは来ないんじゃ?
菅「違うけど···道宮達にはいい話を持って来たんだよ」
澤「あ~、詳しくは説明するから。じゃ、どうぞ」
「ありがとう」
澤村先輩に言われて体育館の中に入って来る姿には···見覚えがあるどころか···
『桜太にぃ?!···どうして?!なんで?!』
道「えっ?城戸さんの知り合い?!誰?!あのイケメン誰?!」
興奮気味の道宮先輩が私の肩を掴んでガクガクと揺らしながら、何度も私と桜太にぃを見比べる。
『あ···兄です、私の』
道「お兄さん?!···なんて羨ましい···あ、じゃなくて!菅原、いい話って?!」
菅「とりあえず落ち着けよ道宮···興奮しすぎ!イケメンだったら普段から見慣れてんだろ?ほら!」
菅原先輩が変に胸を張って見せるも、道宮先輩は遠くを見るような目で辺りを見回して見せた。
道「ん?そんなのいたっけ?どこどこ?」
菅「そう来たか!···って遊んでる場合じゃないんだな、これが」
澤「道宮に紹介するよ。青城の交流戦までの間、コーチを引き受けてくれた城戸桜太さん」
桜「よろしくね?えっと···」
道「みっ、道宮です!道宮結です!」
···なぜそこでフルネームなんだろうか。
桜「じゃあ、短い期間だけどよろしくお願いします、道宮さん」
道「ひゃいっ!!こちらこそよろしくお願いしますっ!!」
桜太にぃが差し出した手を両手でしっかりと握り、やや興奮気味に返事を返す道宮先輩を見ていた。
菅「ちなみにもう知ってると思うけど念の為。桜太さんは紡ちゃんのお兄さんだから」
そうそう、確かにそうだけど···
『桜太にぃ、どういう事?いつの間にそんな話になってたの?私聞いてないんだけど』
桜「まぁ、言いそびれちゃったからね。昨夜、紡はあっという間に寝付いちゃったし」
う···それを言われると返す言葉がありません。
『でもどうして?だって桜太にぃは今のこの状況とか知らな···』
もしかして、桜太にぃをここに案内したのは澤村先輩と菅原先輩ってことは···2人が?
繋「おーい、澤村!ひとり忘れてんぞ!」