第32章 不協和音
道宮先輩のゴメンの意味が分からないまま、その目線の先をゆっくりと辿る。
『あ···』
澤村先輩と菅原先輩に、東峰先輩まで···
3人が一緒にいる事は、別にごく自然な事だし気にはならないけど。
ただ、このタイミングっていうのが何だか複雑な感じで目を逸らしてしまった。
道「澤村、ちょっといいかな?」
濁りつつある空気を察して道宮先輩がスっと1歩前に出る。
道「女バレの練習試合が終わるまで、城戸さん借りるね?さっき承諾貰ったんだけど、澤村にはまだ話してないって言ってたから私も同行したの」
菅「承諾って···紡ちゃん、じゃあ?」
菅原先輩が驚きながらも私を見た。
『はい。ちょっとある人と相談して、考えて決めました。期間中ご迷惑をお掛けしますが、出来る限りの事はしますから、どうぞご理解下さい』
菅「ご理解下さいって、なんでそんな他人行儀な、」
澤「分かった。こっちの事は清水がいるから大丈夫だ。元々は清水ひとりでやってた事だから、なんとでもなるだろ。後は道宮先輩の指示に従ってくれればいい」
旭「大地?それって、マネが清水ひとりに戻るって事か?」
澤「別に、清水だって立派なマネージャーなんだから
ひとりに戻った所で問題はないだろ?手が足りない時はメンバーでカバーすればいいだけの話だ」
清水先輩ひとりに···って、澤村先輩?
道「ちょっと澤村!そんな突っぱねるような言い方しなくても良くない?!城戸さんはさ、男バレの練習準備が終わってから、」
『いいんです道宮先輩!···大丈夫です』
澤村先輩が怒るのも、それは仕方ない。
昨日あんな風に突っぱねるような事をして、一日経ったらコロリと気が変わったように結論を出したのは、私だから。
『大地さん···昨日はごめんなさい。ついカッとなって失礼な事を言ってしまいました。ホントにごめんなさい』
丁寧に頭を下げて昨日の自分の非を改める。
『しばらく···いえ、これからは清水先輩にご迷惑をおかけする形になってしまいますが、よろしくお願いします』
真っ直ぐ目を見て言っても、返ってくる言葉もない。
それだけ、怒ってるって事だよね。
『行ってきます、澤村先輩』
もう一度頭を下げてから道宮先輩と歩き出した。
ちょっとだけ、寂しい気持ちが浮かぶのを···押さえ込みながら。