第32章 不協和音
『それは、お手伝いっていう一時的な在籍、男子バレー部での練習準備が終わってからの女子部への練習参加、それから···正式入部の勧誘はしない、それをお約束してくれるなら』
道「なるほど···最後のは私達にとって厳しい約束だけど。よし!背に腹は変えられない!わかった、その条件を受け入れるよ」
『ありがとうございます!』
道「ありがとうを言うのは私の方だよ!···あ、澤村にはこれから?」
『はい、まぁ···』
こっちの問題よりも、澤村先輩達にそれを伝える方がしんどいっていうか···
道「オッケ!私も一緒に行くよ、澤村のところ。元はと言えば私が言い出したんだし、昨日の今日で澤村に一人で話すのしんどいでしょ?ほら、澤村ってさ、時々変なオーラ出すし?」
あっけらかんと言う道宮先輩に、思わず笑ってしまう。
確かに···怒らせたりすると、だし。
道「そうと決まれば、行こう!···みんな~!私ちょっと男バレの所に行ってくるから先にボール回しとかしてて?」
道宮先輩が中の人達に声をかけ、じゃ行こう!と私の隣を歩き出す。
道「本当はさ···あ、これは私の突っ走りだから聞き流してね?···本当は城戸さんの事を聞いた時、喉から手が出る位に勧誘したかったんだぁ。だけど、澤村に止められてさ?なんでだと思う?」
澤村先輩に止められた?
『いえ···』
道「澤村がね、本人が承諾してならヘルプとして行って貰うのは構わない。だけど、紡はウチの正式な部員だから移籍は無理だ。本人が希望するなら、考えるけど···だって!色々びっくりしたけど、1番びっくりしたのは澤村が名前を呼び捨てにしてたトコ!」
『どうしてですか?』
道「だってさ?清水さんの事だってずっと清水!とかだし、あ、私もそうだけど。名前で呼んでるのは東峰位しか知らなかったしね~」
そう言われると、菅原先輩もスガ!とか呼ばれてる。
道「ね、変なこと聞いてもいい?」
『変なこと?なんですか?』
道「城戸さんと澤村ってさ?その、付き合ってたり···?」
『えっ?!ち、違います!確かに大地さんはプレースタイルがカッコイイとか、優しいとか思いますけど!単なる先輩です!それだけです!』
道宮先輩の言葉に驚いて、ひと息で捲し立てるように言えば、道宮先輩が私の後ろを見ながら気まずそうにゴメン、と乾いた笑いを漏らした。
