第32章 不協和音
~ 慧太side ~
桜「紡はもう寝てたよ」
部屋の明かりをつけたままじゃないと寝付けない姫さんの為に、寝付いたのを確認しに行った桜太が戻って来る。
「で、話ってのは?紡がいたら出来ない話、だったよな?」
わざわざ帰るコールならず、メッセージを送って来たんだからよ。
落としたばかりのコーヒーを渡し、いつものように向かい合って座る。
桜「あぁ、それは···」
桜太が話し出した内容はツッコミどころ満載で、なんて面白い話を持ち帰って来たのかと褒めたたえてやった。
あの何事にも動じなさそうな澤村が、そこまでヘコむとかオレも見たかったぜ。
ま、ここにも同じようなタイプのがいるし?
死ぬほどヘコむ姿は前に見たから···あれは暫くいいな。
頻繁にあんなの見たら、オレが笑い死にする。
桜「それで、どうかな?そっちの都合は」
都合ねぇ···今週はオレ様ご指名の予約入ってたな。
スマホを開き店のシフトを確認すると、これまたいい感じに予定が空いてるってもんだ。
「あぁ、行けるぜ?この日だけはどうしても時間が合わねぇけど、他は飛び込み指名が入んなきゃオッケーだ」
画面を向けて言えば、桜太もそれを覗き自分の予定と照らし合わせる。
桜「その日は俺が早く帰れるから問題ないよ。他は部活始まる頃には間に合わないけど、少し遅れてなら行けるから」
「んじゃ指導者代理ってのはオレらで何とか埋まるな。けど、紡に話さなくていいのか?絶対拗ねるぞ?」
それに紡はまだ、女子部の手伝いするとも言ってねぇし。
桜「紡ならきっと、女子部の事を切り捨てる事はないよ。ただちょっと、足踏みしてるだけ」
「ほ~ん?ま、オレもアイツがちゃんとバレーやってんの···また、見たいしな。今は澤村達に混ざって綱渡りプレーしか見ることねぇし」
···それはそれで、面白いんだけどよ。
桜「そうだね、それは俺も思う。本当はまた、バレーに戻ってくれたら···とか。でもそれは、無理強いしたらどうにかなる事でもないからね···紡は一度決めたら頑として変えないからなぁ。全く誰に似たんだか···父さんかな?」
いや、そりゃお前だよ!とツッコミを入れそうになって、やめる。
それを言ったところで桜太も自分じゃないと頑として認めないからよ。
···そういう所は、兄妹そっくりさんだ。