第32章 不協和音
『ただいま~』
国見ちゃん達に家の前まで送って貰い別れてから、いつもと同じように玄関に入る。
慧「おぅ、おかえり。ご飯にする?お風呂にする?それとも···オレ?」
······
『最後のは絶対にない』
あきれながら言って、そこ退いてと押し退けながら横を通ろうとすれば小脇にガッチリと固められてしまう。
慧「お前なぁ、なんでオレにはいつも塩対応なんだよ。ん?桜太にはベッタベタになるのによ」
『うるさい!そういう所が面倒なの!離してよ!』
手足をバタバタさせて暴れてみれば、慧太にぃは顔を近付け···
慧「お仕置きが必要だな···えいっ!必殺ヒゲジョリジョリアターック!」
『やめてチクチク痛いから!離してホント!うざい!クサイ!』
慧「クサイ···マジか···」
急に床に下ろされたと思えば、慧太にぃは壁に手を付き悩ましげに落ち込んだ。
慧「まだ26だってのに、オレは早くもオヤジ臭か···?いや待てよ?桜太だって同じ歳なんだから、きっと桜太も···」
アホくさ···
ここに縁下先輩辺りがいたら、きっと私と同じ事を思うだろうとため息を吐いた。
『言っとくけど、クサイのはタバコ!タバコの方ね!···慧太にぃがクサイんじゃないから。どっちかって言えば、慧太にぃは香水臭い。ついでに言えば桜太にぃは爽やかないい匂いだから』
慧「やっぱオレだけクサイんじゃん!!」
ホント、面倒。
『とりあえずシャワーして来る。車なかったから桜太にぃはまだなんでしょ?桜太にぃが帰ってから一緒に食べるから』
慧「お···おぅ、了解」
荷物を部屋に置き、着替えを持ってバスルームへと向かう。
流れ作業の様に洗濯機を回しながらシャワーを済ませ、髪を乾かしながらボンヤリと考える。
明日···朝練、あるよね。
澤村先輩に、なんて声を掛けたらいいんだろう。
朝の挨拶はもちろん基本だけど、問題はその後だよ···
矢巾さんは普通にしてればいいって言ってたけど、普通って···なに?
澤村先輩に会う前に、先に道宮先輩にちゃんと話すべき?
どっちが先で、どっちが後にすればいいの?
またも訪れるモヤモヤ感と戦いながら、私はドライヤーのスイッチを切った。