第32章 不協和音
『あれ?こんな所で会うとか珍しいね』
会計を済ませ外へ出ると国見ちゃんと金田一君とバッタリ会った。
国「お前こそ、ひとりで何してんだよ。王様はどうした、いつも一緒に帰ってんだろ?」
金「そ、そうだぞ城戸!しかも矢巾さんと一緒とか驚きだよ!矢巾さんはこう見えてチャラいんだぞ?!」
チャラい···
金田一君から聞くワードに、思わず矢巾さんを見てしまう。
矢「金田一、お前はオレをそういう風に見てたのか?」
国「いや、チャラいっすよ矢巾さんは」
矢「国見···オレはチャラいんじゃなくて、女の子に優しいんだっての!」
···矢巾さんて、ホントに及川先輩にそっくり。
国「で?寄り道か?···矢巾さんと2人で」
『別に、矢巾さんにちょっとご馳走になって、買い物に付き合って貰っただけだよ?っていうか、国見ちゃん、なんで?』
国「ふぅ~ん、あっそ」
嘘偽りのなく正直に言えば、急に興味がなくなったかのように国見ちゃんは会話を途切れさせた。
自分から聞いて来たのに、なんで微妙に怒ってんの?
『桜太にぃにも連絡してあるし、別にこれくらいの寄り道くらい大丈夫だけど』
矢「ま、オレがちゃんと家まで送るから心配すんなって話」
国「家まで?あぁ···じゃあその役目、オレが代わりますよ。オレん家、紡ん家の近くだし。矢巾さんは逆方向っていうか、電車通学っすよね?」
『え?!そうなんですか?!ごめんなさい、私なにも考えてなくて』
うっかりしてた···
周りにいるのが同じ中学出身の人達ばかりだから電車通学してるとか、そういうのあんまり気にしてなかった。
国「そういう事なんで、紡はオレが送って行きます。送るって言うか、通り道だし」
矢「別に気にしなくていいのに」
金「平気っすよ、オレも一緒に送るし」
『えっと、別に私···ひとりで帰れるけど?』
確かに国見ちゃんは家が近いけど、正確に言えば私の家の方に来たら遠回りだし。
国「うるさい、紡。お前は黙ってオレに送られとけ」
うわ···なんか機嫌悪そうだから、言うこと聞いておこう。
『じゃあ、矢巾さん。今日はいろいろとありがとうございました。明日ちゃんと連絡しますね?』
矢「オッケ。じゃ、つーちゃん明日の連絡待ってる」
そう言って手を振りながら、矢巾さんはくるりと背中を向けた。