第32章 不協和音
~ 国見side ~
金「国見、腹減った···」
「オレに言われても困る」
金「だよな」
アホかコイツ。
いや、アホなのは知ってっけど。
「家に帰ればすぐ飯なんか食えんだろ。耐えとけ」
金「耐えとけって···あ!···あぁっ!!」
「なんだよ金田一。急に叫ぶんじゃねぇよ、オレの鼓膜が破れんだろ」
ったく···うるせぇな。
金「く、くくく···国見!アレ見ろよ、アレ!」
「あ?なに?」
金「だから、アレだよ!あそこ歩いてんの矢巾さんと、き、城戸じゃね?!」
矢巾さんと城戸?!
金田一が指さす方を見れば、確かにあれは城戸だ。
オレが城戸を見間違えるハズがねぇ。
けど、なんで矢巾さんといるんだ?
しかもなんか、ちょっと仲良さげな感じが···イラつく。
あの2人···接点、あったか?
金「まさか城戸···あのチャラい矢巾さんと、つ、つつ付き合ってるとか···」
「ねぇよ、絶対ねぇ。オレが保証する」
金「なんで国見が保証出来るんだよ」
「は?そんなの決まってんだろ」
紡が···矢巾さんとってなんか、ねぇだろ。
金「あぁっ!矢巾さんが城戸の肩に腕回した!」
「イチイチうるせぇな金田一···後追うぞ」
金「後追うって?!なに?!」
ったく、動揺し過ぎだっつーの。
「黙れ金田一。お前ただでさえいろいろ目立つんだから、息の根止めて歩け」
金「息の根止めたら歩けねぇよ」
「黙って歩け」
本格的にオレが息の根止めてやろうか、コイツ。
一定距離を保ちつつ紡···はミクロサイズだから、矢巾さんを目印に歩く。
たまに矢巾さんが笑って斜め下を見るのは、紡との会話を楽しんでるってことだろうな。
···それもイラつく。
なんで矢巾さんなんだよ。
ウチの及川さん···エロファミニストの弟子みたいな人だぞ?
ってより、あのエロファミニストよりずっとチャラいぞ!
く···食われたらどうすんだよ!
イラつく気持ちが積み重なって行く中で、金田一が急にオレのカバンを引っ張った。
「おい、なにすんだよ金田一。なんの嫌がらせだ?」
金「バカ、ちげーよ!矢巾さんと城戸が、あの店に入ってったからだよ」
店?
路地に体を滑り込ませ覗けば。
そこは紡がよく通ってた、いかにも女子が好きそうな雑貨屋だった。