第32章 不協和音
矢「ね?そう考えたら、この問題はクリア出来ると思わない?」
まるで及川先輩のように人差し指を立てて笑う矢巾さんの提案は、それはザックリとした切り口の物で。
『なんか凄く···アバウトな感じもしますけど』
矢「だからいいんじゃん?キミだっていつまでも烏野の主将と仲違いしたくはないだろ?」
『そう、ですけど···でも大地さんに正面切って、大嫌い!とか···叫んじゃったし、きっと怒ってると思うんです』
思わず出てしまった言葉だとはいえ、あんな風に···
矢「それもさ、今すぐ謝らなきゃだけど。とりあえず明日になったらさっきの事も踏まえて、ちゃんと向き合ってみたらどう?」
『そうですね···頑張ります』
ちゃんと、謝れるんだろうか···私。
メチャクチャ怒ってる時の澤村先輩って、ある意味···怒ってる時の桜太にぃと匹敵するような···
あ~、ダメダメ!
それでも悪いのは私なんだから、ビビってる場合じゃないんだし!
『ぜ、絶対頑張って謝るんだから!ちゃんと事が運べたら、矢巾さんにも連絡しま···あ、そうだ。連絡先知らなかった···』
矢「オレの?んじゃ、せっかくだから連絡先交換しようか?オレもこれから先、何があって連絡したくなるか分からないしね?」
お互いにスマホをカバンから出して、それぞれの連絡先とLINEのIDを登録しあう。
矢「へぇ、紡ちゃんって名前こういう字なんだ?」
『あ、はい、そうです。私が生まれた時に兄達が、たくさんの人達との出会いを紡いで行けるように···って名付けてくれたそうです』
矢「出会いを、紡ぐ···か。じゃあ、そこにオレも紡がれたのかな?なんて」
『そうですね。私もまさか、こんな風に青城の皆さんとお知り合いになるとは思いませんでした。及川先輩とハジメ先輩は中学からの先輩ですけど、あとは···松川さんとか』
矢「ま、松川さん?!そりゃびっくりだ」
松川さんは、前に及川先輩からお借りしたマフラーを桜太にぃと返しに言った時、連絡先交換したんだよね。
受験の時とか、いろいろとメッセージくれたり電話くれたりして···凄く優しい人だと思った。
青城との練習試合からは、ほとんど連絡貰ってないけど、そのうち私からも連絡してみよう。
···用事があったら、だけど。
矢「そろそろ出ようか?あんまり遅くなると心配されるだろ?」
