第32章 不協和音
~ 菅原side ~
「おーい、影山も日向も西谷も!そろそろタイムリミットだから片付け始めろよー??」
「「 っス!! 」」
ま、ボールやらなんやらはアイツらに任せといて。
オレは···こっちを何とかしないと、だなぁ。
自主練をするアイツらを見守っているようで、実は石像の様に固まって動かない···大地をね。
気持ちは分かるけどねぇ。
だって紡ちゃんに、あんな正面切って “大地さんなんか大嫌い!” とか言われたらオレだってこうなるよ。
いや、オレは多分これ以上だな···うん。
さっきの光景を思い出し、大地の立ち位置を自分に置き換えて想像してみる。
“スガさんなんか大嫌い!”
大嫌い!···大嫌い!···大···
自分で想像しといてアレだけど、これ···想像だけでも相当なダメージ食らうな···
痛恨の一撃っていうか、致命傷っていうか、なんというか。
西「スガさん、片付け終わりました!っていうか、大地さんどうしちゃったんですか?···アレ、死にそうになってる時の旭さんと同じオーラ出てますけど」
「西谷···あれはそっとしといてやってくれ」
気を使うように西谷が小声でオレに聞いて来るも、答えようがない問題だからな、これは。
「そのうち元に戻るよ、多分ね。さ、帰るべ!」
早く体育館出ろよ~!と声をかけながら歩き、最後に大地のケツに蹴りを入れて目を覚まさせる。
「大地!お前は主将なんだから、もっとしっかりしろ!気持ちは分かるけど、お前が折れたら部員みんなが地に落ちるだろ!」
澤「あ···あぁ···そう、だけどさ···」
ダメだこりゃ。
相当なダメージ食らってんな。
「とにかくココの鍵閉めなきゃだから、ほら、大地も早く出ろよ。鍵当番オレが代わってやるからさ、早く早く!」
追い出すように大地の背中を押して一緒に外に出て鍵を閉める。
その頃にはもう、着替え終わったヤツらが帰るのとすれ違ったりして、気をつけて帰れよなんて声を掛けながらオレも大地を引っ張って歩いた。
さて···このヘナちょこガラスハートの大地を、どうやって正気に戻そうか。
そんな事を考えながら、オレは部室の中へと大地を引き摺って入った。