第32章 不協和音
~ 矢巾side ~
あ~···腹減った。
最近の及川さんと岩泉さん達の気合い入りまくりの練習、ハンパねぇ···
さっさと帰ってメシ食おう。
あ、その前に本屋寄って月刊バリボー買わないとな。
発売日忘れてて、まだ買ってないし。
駅前通りの書店に入り目的の物を買って、んじゃ帰るか···と自動ドアを通り過ぎると軽く衝撃を受けた。
「おわっ?!」
『あっ、すみません、ちゃんと前見てなくて···ケガはありませんか??』
「いや、別にオレは平気だけど···」
あれ、この制服って···?
『本当にすみませんでした』
もう一度オレに謝りながらゆっくりと上げていく顔を見れば···その顔には見覚えがあった。
「もしかして、烏野バレー部の?」
えっと、なんだっけ?
やべぇ、名前が思い出せない···確か金田一と仲良くて、なんかいろいろ喋ってて···名前···名前···あっ!
「ポチ!!」
『え?』
あれ?!違った?!
『あ···矢巾、さん?』
オレの名前知ってるってコトは正解?!
「やっぱり!烏野の制服だし、もしかして···とか思ったんだけど声掛けてみて良かったよ」
『あ、はい···でも、どうしてポチって?ウチでも月島君しか呼ばないから、ビックリしました』
「えっ?!あ、あぁ~まぁ、前に聞いた時に印象が強かったから、つい···アハハ」
オレのバカ!自分で泥濘にハマってどうすんだよ!
『まぁ、別に構わないですけど。それより、ぶつかっちゃって本当にごめんなさい』
更に謝りながら、ポチさんは目元をスッと拭った。
もしかして···泣いてた?
「あ、あのさ?オレとぶつかって、涙出るほどどっか痛かった?!」
思わず屈んで顔を両手で挟めば···これ、いま泣いてた感じじゃない、よな?
『これは別に···ちょっと、いえ、なんでもないです』
「なんでもなくないだろ?それに女の子があんまり目元ゴシゴシしたら明日大変だよ?」
確かカバンの中に···あ、あったあった!
「あのさ、コレちょっと溶けかかってるけど···保冷剤。大丈夫、まだ冷たいから目元···当てなよ?何もしないよりマシだからさ」
『保冷剤、ですか?矢巾さんこそ、どこかケガを?』
「あ~違う違う。今日の弁当に乗せられてたやつ」
『お弁当に···ふふっ』
え、笑われた?!