第32章 不協和音
~ 影山side ~
アイツ、まだ戻らねぇ。
昼休みにちょっと寝てた間にどこ行ったんだ?
もうすぐ予鈴鳴るってのに···
ちょっと廊下を覗いてみようと顔を出せば、ちょうどそこで山口が手を洗ってるところだった。
「山口。城戸···見なかったか?」
山「影山かぁ、びっくりした···城戸さんなら、昼休み始まってすぐ位に、校内放送で呼び出されてたよ?えっと···和泉先生、だったかな?」
和泉?
「誰だよ、それ」
山「え?あ、そっか···進学クラスでたまに授業やる英語科の先生だよ」
「進学クラスの英語科?なんで城戸が?」
山「オレもよくわかんないけど、ツッキーが夏休みの短期留学がどーの···って言ってたよ?もしかしてまだ城戸さん戻ってないの?」
「まぁ···」
職員室に呼び出しなら、授業には戻るだろ。
それにアイツ、妙に気になる事を言ってたから、それも聞かなきゃだし。
学校ついてから澤村さんに届け物があるって言って戻ってきた時、なんか様子がおかしかったからな。
何があったか聞こうとしたら予鈴が鳴って話せなかったし。
山「影山?」
「あ、悪ぃ。城戸の居場所が分かればそんでいいや」
山「じゃ、オレ行くね?」
「おぅ」
山口が立ち去った後に予鈴が鳴っても、城戸は戻っては来なかった。
···なんか、あったのか?
帰っちまったにしては、荷物とか···まんま置いてあるよな?
じゃあ、なんでだ?
「おーい、席につけ!授業始めるぞ!」
教科担当が入って来てクラスがザワザワしながらも授業を始める体制になる。
「先生、城戸さんがまだ···」
日直がわざわざ報告すれば、教科担当は知っているのか構わないと答えた。
「城戸は英語科の和泉先生と保護者の方とで面談してる。この時間は公欠扱いだ」
は、ぁ?!
面談してるってなんだ?!
保護者って···多分、桜太さんか慧太さんだよな?
城戸の両親は海外行ってていねぇし。
···行くのか、短期留学。
その事を話したくて、朝から様子が変だったのか?
くそっ!!
昼休みに寝てるんじゃなかった!
イライラする気持ちと戦いながら、進む授業と向かい合う。
授業時間を半分過ぎても、城戸が戻って来る事はなかった。